研究課題/領域番号 |
23659492
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
田村 智彦 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50285144)
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研究分担者 |
足立 典隆 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (30264675)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 米国 / 転写 / エピジェネティックメモリー / 細胞分化 |
研究概要 |
ヒストンH3.3はエピジェネティックな「転写の記憶」を担うH3バリアントである。本研究では血球分化におけるH3.3の役割を解析することで、最終的には普遍的な「細胞分化の基本原理」の理解を目指す。 今年度は、単一の転写因子IRF8によって分化が誘導できる独自のin vitroマクロファージ分化系(論文発表、Yamamoto et al)を用い、分化によって発現が変化する遺伝子をマイクロアレイにて同定し、その遺伝子座におけるH3.3の取り込みををクロマチン免疫沈降法(ChIP)にて経時的に解析した。H3.3に対する特異的抗体は存在しないため、H3.3-YFPキメラを導入し抗GFP抗体を用いた。さらにIRF8そのものや多数の修飾ヒストンH3(K4me1, K4me3, K36me3, K9me2, K9me3)に対するChIPを行なった。当初ChIP-PCRを中心にする予定であったが、次世代シーケンサーを用いた全ゲノムChIPシーケンス(ChIP-seq)の系を確立できたので、対照のベクター導入細胞とIRF8導入細胞両方について、H3.3, IRF8, 各修飾ヒストンのすべてのChIP-seqを施行した。 一方、全ゲノム規模の発現プロファイルとChIP-seqデータのバイオインフォマティクスによる統合解析の手法を成熟させ、現在上記で得られた膨大なデータを解析している。途中結果としては、H3.3は分化の過程で、以前i我々がインターフェロン誘導遺伝子について報告したcoding sequence 3'側、特にK36me3と類似した部位に取り込まれるのに加え、その他の興味深い部位にも取り込まれる事が新たに判明している。 また、インターフェロン誘導遺伝子についての解析も進め、H3.3のK36の点変異体を用いた解析から、H3.3の取り込みにはK36が必須であることを見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下の二点により、当初の計画以上に進展していると自己評価する。(1)当初はChIP-PCRでの少数の遺伝子についての解析を中心に計画していたが、H3.3, IRF8, あらゆる修飾ヒストンすべてについて全ゲノム規模での解析を行なうことができたこと。(2)困難を予想していた、バイオインフォマティクスによる解析手法の確立が、非常に早いペースで進んだこと。
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今後の研究の推進方策 |
ChIP-seqによる全ゲノム規模でのデータ取得とバイオインフォマティクスによる解析を効率よく進められる体制ができたので、これを最も重視していきたい。 H3.3によるエピジェネティックメモリーの生理的意義、その破綻と疾患の関係に迫るために、H3.3のノックダウンを試みる。H3.3の発現は高いと思われるので挑戦的ではあるが、既にNIH3T3細胞ではmRNA発現レベルを数分の一に減少させる事に成功している。一方、限られたリソースで研究を進める中で、H3.3コンディショナル欠損ヒトpreB細胞株の作製に関しては、優先順位を下げることとしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費、特に消耗品が主となる。次世代シーケンサー解析(本学にパーソナル機であるMiSeqが導入されたのでこれを活用する)のフローセルや試薬、マイクロアレイのチップと試薬、細胞培養のための牛胎仔血清や各種サイトカイン、クロマチン免疫沈降法のための抗体、レトロウイルス作製の為のトランスフェクション試薬、プラスチック器具などに約80万円を予定している。 その他学会発表の旅費、マウス飼育費、マウスジェノタイピングのための実験補助員人件費などに50万円を予定している。
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