研究課題
多細胞生物の細胞分化においては,各系譜に特異的な転写因子によってしかるべき下流遺伝子の転写が活性化あるいは抑制されることが必須であること,そしてその制御機構が破綻するとがん等の疾患を引き起こしうることが知られている.近年,真核生物の転写制御において重要性が明らかとなっているエピジェネティックな制御は,種々のヒストンバリアントの取込みによってもなされている可能性が示されている.ヒストンH3のバリアントであるH3.3は,細胞周期に関わらず合成され,転写の亢進した部位に取込まれることから,H3.3が「転写活性化状態のエピジェネティックメモリー」を担いうることが指摘されている.本研究においては,細胞分化,特にマクロファージ分化におけるH3.3の取込み部位についてChIP-seq法による網羅的解析を行い,また転写活性化時のH3.3のクロマチンへの取込み機構について解析した.マクロファージ分化でのH3.3の取込みが,以前に研究代表者が報告したように活性化された遺伝子の3’領域に生じるのに加え,プロモーター領域においても検出され,転写伸長の他複数の段階で遺伝子発現に関与していることが示唆された.またトリメチル化を受ける部位であるK36の変異体を用いることにより,H3.3のクロマチンへの取込みにはK36の修飾が不可欠であることが明らかとなった.今後、本研究の結果を基盤とし、epigenetic memoryの破綻が細胞に与える影響等の解析を進めることにより、未だ原因の究明できていない疾患群の病因・病態の理解と治療の新たな可能性が開かれる事が強く期待される。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Blood
巻: 121 ページ: 1839-1849
DOI:10.1182/blood-2012-06-437863
Cell Reports
巻: 1 ページ: 334-340
DOI:10.1016/j.celrep.2012.02.014
PLoS ONE
巻: 78 ページ: e34719
10.1371/journal.pone.0034719.
www-user.yokohama-cu.ac.jp/~immunol/