研究概要 |
本研究では、「免疫系多因子疾患の発症においては、ユビキタスに存在する環境因子に対する応答性の個体差が重要である」との仮説のもとに、シリカ、アスベスト、コレステロールなどの結晶や、紫外線(UVB)、酸化ストレス、さらには尿酸、ATPなどのdanger signalを感知してIL-1 beta, IL-18産生を誘導するNLRP3(NALP3)に注目し、その遺伝子多型と、日本人集団における膠原病の発症や臨床病型との関連を検討した。HapMapデータベースを利用し、NLRP3遺伝子より、日本人集団におけるtagSNP 16個所を選定し、まず、過去に疾患との関連の報告がある5個所のSNPにつき、日本人集団における全身性エリテマトーデス(SLE) 440例、健常対照群 550例のゲノムDNAを用いた関連研究を施行した。この結果、rs1539019A/A遺伝子型とSLEとの関連が検出された(P=0.030, オッズ比[OR]1.45、95%信頼区間[CI]1.04-2.03)。この関連は、腎症合併SLE群において顕著であった(P=0.011, OR 1.66, 95%CI 1.13-2.46)。また、rs461266Cアリル頻度の腎症合併SLEにおける増加も検出された(P=0.040, OR 1.27, 95%CI 1.01-1.60)。以上の結果から、NLRP3多型とSLEとの関連が、国内外を通じてはじめて検出された。
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