NLRP3遺伝子全長をカバーする16個所のtagSNPを対象として、日本人全身性エリテマトーデス(SLE)505例、健常対照群515例の関連研究を施行した。この結果、前年度に見いだされたrs1539019、rs4925650に加え、rs3806266の関連が検出された。 これらに関して、独立のSLE 236検体、健常対照群 401検体を対象としたreplication studyを施行したところ、replication群単独ではSLEとの関連は検出されなかった。両者を統合すると、腎障害合併SLE群におけるrs1539019A/A遺伝子型、rs4925650AアリルとA/A遺伝子型、dsDNA抗体陽性群におけるrs4925650A/A遺伝子型の増加が検出された。ロジスティック回帰分析により、これら2個所のSNPは独立に寄与することが示唆された。eQTL解析により、rs1539019A/A遺伝子型とT細胞におけるNLRP3 mRNA低下の関連が検出された。 また、過去に報告したSLE関連遺伝子との相互作用の検討により、BLK rs13277113AとNLRP3 rs1539019Aの間に、有意な遺伝子間相互作用が検出された。 関連が検出されたNLRP3 SNPを対象に、シリカが環境因子として確立している全身性強皮症、ANCA関連血管炎との関連を検討した結果、関連の傾向は観察されたものの、統計学的有意差には到達しなかった。 また、自然免疫系において重要な役割を果たすUBE2L3、PHRF1-IRF7領域と強皮症、SLEとの関連を検出した。今後、これらを含め、NLRP3とシグナル伝達における相互作用を想定しうる遺伝子多型との遺伝子間相互作用の解析を進める必要があると考えられた。また、強皮症やANCA関連血管炎は、さらにサンプルサイズを増やして検討を進める必要あると考えられた。
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