研究課題
研究の目的:主として若年者が罹患する炎症性腸疾患は、クローン病が3万人、潰瘍性大腸炎が7万人と推定され、社会的な損失は計り知れない。炎症性疾患の日常臨床において、抗体医薬などの新治療が登場してきたが、もっとも大きな問題は、病勢を知るためのマーカーがないことである。我々は、肺胞蛋白症における抗GM-CSF自己抗体の発見に端を発し、種々の疾患で血清抗GM-CSF自己抗体を測定する過程で、炎症性疾患のほとんどで、IgM型の抗GM-CSF自己抗体が陽性になることを発見した。本研究では、炎症性腸疾患の患者に対し、血清抗GM-CSF自己抗体の抗体価測定を行い、病勢との相関を検討し、病勢マーカーとしての有用性を明確にすることである。研究の方法:本学医学部倫理委員会の承認を得て、炎症性腸疾患91例、年齢・性が一致した41人の健常者から血清を文書同意を得て採取した。血清は、当研究室で開発したELISA法を用いてIgG型GM-CSF自己抗体、IgM型GM-CSF自己抗体を別々に測定した。研究の結果:血清IgG型GM-CSF自己抗体濃度は、炎症性腸疾患が0.105±0.04 microgram/mlであり、健常者のそれは、0.010±0.010 microgram/mlであった。両群の有意差は、0.18で有意でなかった。一方、血清IgM型GM-CSF自己抗体濃度は、炎症性腸疾患が 1.80±0.18 microgram/mlであり、健常者のそれは、1.12±0.14 microgram/mlであった。両群の有意差は、0.0063であり、有意であった。現在、炎症性疾患を潰瘍性大腸炎とクローン病に分類し、さらに重症度別にサブ解析を進めている。
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