研究課題/領域番号 |
23659504
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
梶野 喜一 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 准教授 (80322147)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | CTLワクチン |
研究概要 |
毎年アジア・アフリカで多数の感染者や死者が出ているマラリアに対しては、他の感染症の様に有効なワクチンは存在せず、その開発も遅れている。我々はペプチド結合リポソームを使ったキラーT細胞(CTL)活性を強く誘導するワクチンの開発を行っており、マラリアに対しても応用が可能ではないかと考えた。抗体が病原体に直接結合して攻撃するのと異なり、CTLは感染細胞を攻撃するという作用機序を持つ。そこでマラリアゲノムのデータベースなどを使い、マラリア原虫の生体内での増殖を肝細胞感染のステージでCTLにより阻害するヒト用CTL誘導型マラリアワクチンの開発を目指した。 今年度はまず、ヒトクラスI-MHCの1つであり、日本人の約6割が保有するHLA-A24に結合し、生体内でCTL活性を誘導するマラリア由来の抗原決定基(エピトープ)の探索を行った。マラリアゲノムデータベースとして使用可能なものにFull-Malaria(http://fullmal.hgc.jp/index_ajax.html)とPlasmoDB(http://plasmodb.org/plasmo/)が存在する。それぞれのデータベースから、ヒトマラリア原虫であるPlasmodium falciparumとマウスマラリアであるP. bergheiおよびP. yoeliiで共通し、かつ各原虫ステージ(特に肝細胞ステージ)における転写発現の高いRNA由来のタンパク質(発現が予想されるものを含む)12種類からCTLエピトープ予測プログラムNET-CTL(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetCTL/)を使い、30種類のエピトープ候補をデザインした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2種類のマラリアデータベースのデータ照合に手間取り、HLA-A*2402結合ペプチドの予測およびデザインしたペプチドの発注が遅れたため、in vivo CTLアッセイによるエピトープスクリーニングを予定どおり行えなかった。蚊の繁殖のための環境整備と昆虫用ケージの準備は予定通りに行い、感染実験に向けた準備は整備された。
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今後の研究の推進方策 |
データベースからの情報取得に時間がかかり、またCTLエピトープ候補となる原虫内発現タンパク質の条件設定に手間取り、ワクチン候補ペプチドの設計が遅れた。ペプチド合成には6週間程度必要なため年度内納品が間に合わず、スクリーニング用ペプチド合成代金約60万円を次年度に繰り越さざるを得なかった。各エピトープ候補ペプチドは発注をかけており、納品後に速やかにCTL活性のスクリーニングを行い、ドミナントエピトープの決定を行う。そのためのマウスの繁殖を急ぎ、多くの匹数でスクリーニングを短期間で終了させるべく活動を続ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に繰り越した60万円はすべてスクリーニングペプチド用に使う。また、ドミナントエピトープが確定した時点でそのエピトープだけ高純度で再合成を行うために、40万円を使用。動物実験のための施設料として30万円、動物飼育費として30万円、試薬代などの消耗品費として30万円を使用する。
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