研究概要 |
我々はヒト末梢血単核球(hPBM)移植NOD/Scid/Jak3-/-(hNOJ)マウスに赤色蛍光蛋白(mCherry)を標識したHIV(HIV_<mC>)を接種し感染細胞の生体内播種ダイナミクスをin vivo imaging、免疫染色、p24定量などで解析することに成功しており、得られた知見がヒトで起こるHIV初期感染の病態、高ウイルス血圧、リンパ節腫大などとmimicしていたことを既に明らかにしている。本萌芽研究では我々の手法で得られたHIV初期感染動態が、抗HIV薬の一つであるインテグラーゼ阻害剤raltegravir(RAL)の治療下でどのように変化するか検討した。hNOJマウスに経腹腔的にHIV_<mC>を感染させ、24時間後からRAL(40mg/kg/day, twice a day, ip)の投与を開始し、14日後にHIV_<mC>感染hNOJにおけるウイルス学、蛍光分析、組織免疫学的解析を行った。HIV_<mC>感染hNOJマウスの投与群と非投与群を比較すると、投与群でHIV RNAコピー数の減少などを認めたが、いくつかの個体ではウイルス血症を完全な抑制が見られなかった。感染細胞のpossible sanctuaryを仔細に検討したところ、in vivo imagingによって腹腔大網にmCherry蛍光シグナルが観察され、その蛍光シグナルに一致してmCherry蛋白発現とHIV p24産生が免疫染色で確認された。これらの感染細胞の主たる分画は単球/樹状細胞系であった。これらの知見から、RAL投与開始までの期間に感染が確立した樹状系細胞が持続的にウイルスを産生している可能性が示唆され、これらの手法が治療によって抑制できないウイルス血症が生じる原因を検討するために有効な手段になると示した。今後は人で見られる経膣・経直腸など他の感染経路で播種態様を検討する予定である。
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