研究課題/領域番号 |
23659512
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
呉 繁夫 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10205221)
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研究分担者 |
冨永 悌二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00217548)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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キーワード | モヤモヤ病 / 遺伝子診断 |
研究概要 |
モヤモヤ病(MMD)は両側ウイリス動脈輪の閉塞と異常側副血管新生による脳虚血・出血を特徴とする疾患で、脳出血発症後の予後は悪い。定期的MRI検査とバイパス手術による早期介入を可能にするには、発症リスクの高い個体を見出す方法の開発が望まれる。申請者らは日本人MMD患者の全ゲノム相関解析を行い、有意な相関を持つ17番染色体領域から、疾患感受性遺伝子RNF213,及びその創始者変異を同定した。この変異によりMMD発症リスクが190倍に上昇し、発症リスク診断の可能性を示した(特許出願)。本研究では、他の領域の疾患感受性変異/多型を同定し、これらを組み合わせ、確度が高く簡便な遺伝子診断法の確立を目的とする。 モヤモヤ病の全ゲノム相関解析で、疾患感受性遺伝子の存在が示唆された、3番、11番、17番染色体の疾患感受性領域のシークエンス解析は終了した。17番染色体からは高頻度遺伝子変位を同定し、3番、11番染色体からは特定の変異を見出す事が出来なかった。計画通り、3番、11番染色体のコピー数変化をCGHマイクロアレイにて検索したが、コピー数変化を見出すことは出来なかった。17番染色体に見出されていた高頻度遺伝子変異以外のRNF213遺伝子変異について探索を行った。その結果、10種類以上の新たな遺伝子変異を同定した(Miyatake et al. Neurology, 78:803-10).見出された遺伝子変異はいずれも特定の家系にのみ認められるもので、複数の家系に認められるRNF213遺伝子変異は存在しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災により実験室が被災し、水道、電気、ガスなどの実験に必要なインフラが一定期間止まり、実験の実施が困難な期間があったため当初の計画通りに研究を遂行することが出来なかった。実験室の修理とインフラの復旧後、実験を開始し、遅れを取り戻す様努力したが、研究の遅れを完全に取り戻すことは出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
モヤモヤ病の全ゲノム相関解析で、疾患感受性遺伝子の存在が示唆された、3番、11番、17番染色体の疾患感受性領域のシークエンス解析を行い、7番染色体からは高頻度遺伝子変位を同定し、3番、11番染色体からは特定の変異を見出す事が出来ず、次の段階として3番、11番染色体のコピー数変化をCGHマイクロアレイにて検索したが、コピー数変化を見出すことは出来なかった。3番、11番染色体には、遺伝子点変異やコピー数変異を見出す事が出来なかったので、有意の相関が認められるSNPを用い、孤発MMD患者のRNF213遺伝子恋頻度変異の有無、3番、11番染色体上のSNPをタイピングする。複数の遺伝子多型による発症予測モデルを構築し、解析していく。3つの遺伝子変異/多型をすべて利用する場合と2つのみ使用する場合との比較など、各解析モデルでの発症リスク等のパラメーターを算定し、発症予測が最も正確に行える方法を見出す。なお、孤発MMD患者DNA検体,MMD家系の家族DNA検体,および、正常日本人DNA検体は既に収集済みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
3番、11番、17番染色体でモヤモヤ病発症と相関を示すSNPを用い、発症予測モデルを構築し、解析していく。3つの遺伝子変異/多型をすべて利用する場合と2つのみ使用する場合との比較など、各解析モデルでの発症リスク等のパラメーターを算定し、発症予測が最も正確に行える方法を見出す。 CASSOH法による遺伝子変異の迅速・簡便な検出系の確立を行う。CASSOH法は検出しようとする変異/多型を含む遺伝子断片をPCRにて増幅後、PCR産物中の遺伝子変異/多型の有無を特別な機械・装置を利用することなく検出する方法で、ベッドサイドやクリニックでの利用を想定して開発した。検出原理は、次頁の図のようにオリゴDNAプローブとターゲット配列との結合が変異があると弱まることを利用している。この差をより大きくするために、検出プローブ長や競合プローブの添加などの工夫が加えられている。この独自の手法により、モヤモヤ病の発症の予測に有用な遺伝子検査の確立を目指す。
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