本研究ではこれまでに病因遺伝子が同定されていない遺伝性疾患を有する家系を対象として、次世代高速シークエンサーと高密度マイクロアレイを用いた原因遺伝子の同定を実施し、病因遺伝子変異を同定しようとするものである。本年度は、(1)各検体におけるエ クソン領域の捕捉・濃縮を行った~SureSelect Human All Exon Kit (アジレント社)を用いて、各検体のゲノムDNAから約38 Mbのエクソン領域(ヒトゲノム領域の約1%)を捕捉・濃縮した。(2)上記で得られた検体について、次世代高速シークエンサーを用いた解析をおこない、全エクソンの塩基配列情報を得た。(3)エクソームシークエンス結果の情報処理による解析を実施した。まず、東北大学医学部の情報処理専門家の協力を得て、この部分の情報解析パイプラインの構築をおこなった。次に、①アミノ酸置換を伴う塩基置換、②エクソン/イントロン境界のスプライス部位に存在する塩基置換、③翻訳領域に存在する欠失・挿入を抽出したのち、dbSNPなどのデータベースに存在する遺伝子多型をフィルターして取り除くとともに、家系内での連鎖を検討した。(4)得られた候補遺伝子変異についてはキャピラリーシークエンサーによる遺伝子変異の再確認をおこなった。そのうち糸球体腎炎家系に関しては倫理員会の承認を得て、家族のうち6名(罹患者3名、非罹患者3名)のDNA検体の解析を実施し、3名の罹患者でヘテロ接合体、3名の非罹患者でホモ接合体を示す42個の候補遺伝子変異を同定した。このなかで、その遺伝子発現や1000人ゲノムの情報から候補遺伝子を更に絞り込み、キャピラリー・シークエンサーによる変異の確定を行った。
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