研究課題/領域番号 |
23659515
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 泰佑 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70597129)
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研究分担者 |
賀藤 均 独立行政法人国立成育医療研究センター, 器官病態系内科部, 部長 (70214393)
五條 理志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90316745)
梅津 光生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90132927)
銭 逸 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (80389147)
横田 元 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 循環器内科, 研究員 (60600202)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 先天性心疾患 |
研究概要 |
われわれの研究では、近年実用化されつつある「心臓超音波やMRIでの血流可視化装置」を元に我々の共同研究で新たに開発された『可視化血流からエネルギー損失を実計測するシステム』を用い、患者の肺動脈弁周囲でのエネルギー損失を計測し、右心不全の進行を予防するための手術適応基準を確立することを目指している。血流ベクトル解析および血流のエネルギー損失値の算出は、全く新しい技術である。そのため、臨床データを本格的に収集する前に、(1)血流ベクトル解析のデータから血流のエネルギー損失を算出するプログラムを作成し、(2)コンピュータシミュレーションによる精度評価に基づいてプログラムの調整を行い、(3)実際の患者さんでエコーのデータをとり手技の工夫やエコー機器の設定の調節を行なう必要がある。これまでに、血流のエネルギー損失の算出プログラムはほぼ完成した。血流の速度と向きをあらわすベクトルデータから、血流のエネルギー損失値を算出することが可能となった。ある範囲での血流の速度の変化が急であればあるほど、また血流の向きのばらつきが大きければ大きいほど、エネルギー損失値は大きい値となる。これを生体で算出可能とした報告はこれまでになく、全く新しい技術である。さらに、コンピュータシミュレーションも行なっており、この技術によって算出されたエネルギー損失値の精度が、信頼性のあるものであることも確認できた。エネルギー損失値のグラフィック表示もできるようなプログラムとなっており、簡便、視覚的かつ直感的に心内の血流を評価することが可能で、臨床医にとって有用な技術が確立できたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、解析プログラムの確立に加えて、pilot study的に、数例の臨床データの解析も行って、エコー機器の設定や検査手技も確立させる予定であった。しかし、血流ベクトル解析のシステムは、日立アロカメディカル社のものを使用する予定であるが、これの市販が遅れたため、実際の臨床データの解析を行うことができていない。また、東京大学医学部附属病院小児科において、日立アロカメディカル社製の心臓超音波検査機器の購入申請が2年連続で却下されてしまい、現状では臨床データの収集が困難である。そこで中央検査部にある心臓超音波検査機器を使用させてもらえるように交渉を行い、平成24年度からは、使用できるメドがたったところである。血流ベクトル解析のシステムは平成24年内に市販が予定されており、またエネルギー損失値の算出プログラムについてはほぼ完成しているので、日立アロカメディカル社製の心臓超音波検査機器さえ使用できるようになれば、今年度から臨床データの収集および解析が可能となると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
血流ベクトル解析、およびエネルギー損失値の算出プログラムについては、ほぼ実用レベルにまで完成度が高まっており、臨床応用の準備は整ったと言える。今後は、ファロー四徴症術後の遠隔期の患者を対象に、文書と口頭で研究参加への説明と同意を得る。日立アロカメディカル社製の心臓超音波検査機器の使用についても、中央検査室と交渉を進め、臨床データの収集と血流ベクトル解析を開始する。実際の患者さんを対象にして解析すること自体が初めてなので、適切なデータを得るためには、エコー機器の設定や検査手技などに工夫や慣れが必要であると思われる。したがって、当初は主に東京大学医学部附属病院の患者さんを中心に、臨床データの収集と血流ベクトル解析を行う。検査手技がある程度確立したところで、独立行政法人国立成育医療研究センター病院でも臨床データの収集を開始する。今年度の症例数は10~15例程度を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本格的な臨床データの収集、血流ベクトル解析を開始する。複数の施設での共同研究なので、こまめに進捗状況を打ち合わせる必要があり、そのための交通費、データ保存のためのコンピュータや記憶ディスクドライブなどへの支出が予定されている。また、ファロー四徴症術後遠隔期の管理・治療(肺動脈弁置換術)については、近年、多くの施設で研究、報告がなされており、情報収集のための学術集会や研究会への参加費への支出も予定される。
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