研究課題
疾患モデルラットにおける発達障害の病態を解明するために、網羅的行動テストバッテリーと神経伝達物質の脳内濃度の測定を行った。(1)網羅的行動テストバッテリー 行動テストとして、高架式十字迷路、バーンズ迷路、オープンフィールドテスト、3チャンバー社会性交流テスト、ロータロッドテストを実施し、野生型とScn1a変異ホモ接合体と比較した。高架式十字迷路では、変異型ではオープンアームに滞在する時間が長く、衝動性が強いと推測された。バーンズ迷路では、空間学習障害、固執性が認められ、オープンフィールドテストでは、多動性が、ロータロッドテストでは運動学習障害が確認された。3チャンバー社会性交流テストでは有意差のある変化は認められなかった。以上の結果から、Scn1a変異ホモ接合体では、衝動性、多動性、学習障害、協調運動学習障害を合併することが明らかになった。さらに、長時間のビデオ脳波同時記録により、同モデルラットでは自発発作がないことを確認した。このことは、発達障害が、てんかん発作の二次的障害で起きているのではなく、Scn1a遺伝子変異に基づく電位依存性ナトリウムチャネルNav1.1の機能異常そのものに起因する可能性が示唆された。(2)神経伝達物質の脳内濃度の変化 8週齢のラットの脳を取出し、前頭皮質、側坐核を含む脳底部、海馬、線条体、小脳虫部に分割した。それぞれの部位で、5HT(セロトニン),5-HIAA(5-Hydroxyindoleacetic acid)、L-DOPA, Dopamine, DOPAC(dihydroxyphenylacetic acid), HVA(homovanillic acid)の濃度を高速液体クロマトグラフHPLC法を用いて測定した。Scn1a変異ホモ接合体ラットでは、線条体と側坐核での5HTとDopamineの低下が認められた。
3: やや遅れている
当該年度に予定していた電気生理実験とシナプス形態解析を実施することができなかった。年度初めに(5月)に体調を崩し、療養は7か月に及んで十分な実験時間を確保することができなかったためである。
神経細胞の形態解析:学習障害、小脳機能障害が行動テストによって明らかになったので、海馬と小脳を中心に形態学的異常の有無を検討する。 治療法の開発として、機能的・形態的シナプス可塑性を制御する遺伝子を脳室内に投与し、行動解析、神経伝達物質、形態学的検査によって効果を判定する。
神経細胞の形態解析:海馬と小脳を中心に形態学的異常の有無を検討する。HE染色、ゴルジ染色を行う。層構造の乱れ、小脳回、小脳活樹の質、樹状突起の伸長、シナプス前終末(ブートン)の数を評価する。 発達障害の症状のひとつとして、母子養育異常があることが推測されている。この病態を明らかにするために、出産後の脳内神経伝達物質の変化を検討する。また、仔側の要因も考えられるので、超音波測定を実施する。 治療法の開発として、機能的・形態的シナプス可塑性を制御する遺伝子を脳室内に投与し、行動解析、神経伝達物質、形態学的検査によって効果を判定する。
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