研究課題/領域番号 |
23659523
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
森島 恒雄 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90157892)
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研究分担者 |
塚原 宏一 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90207340)
山下 信子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40379798)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | インフルエンザ / 肺炎 / サイトカイン / 酸化ストレス |
研究概要 |
・2009pdmの治療成績が、諸外国より突出して優れていた日本の治療の基本は、「病態に基づいた治療」である。これを、未だ治療法の確立されていないH5N1に応用し、「H5N1の治療法の確立」をめざすことが本研究の目的である。・その手掛かりとなるのが、2009pdmの病態解明である。2009 pdm自験例のマイクロアレイの解析で、「これまでに関連が報告されていない」遺伝子の関与が示唆された。神経症状と肺炎症状を呈した群では、明らかな違いが存在し、これらの遺伝子群の解明はH5N1の肺炎・脳症の病態解明にも有用であると考えられた。・重症インフルエンザ治療の基本は従来、1抗ウイルス薬、2抗サイトカイン・ケモカイン(抗炎症)であったが、3本目の柱となりつつあるレドックス制御について、マウスモデルにおいてインフルエンザ肺炎の重症化をチオレドキシン(TRX)が治療効果(生存率の有意な改善)を示すことが明らかになった。その病態は、抗サイトカインによるものだけでなく、酸化ストレスの抑制によるものであった。この結果に基づき次年度は、H5N1感染動物に対するTRXの治療効果を検討し、新しい治療法の確立に挑戦する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2009pdm感染マウスモデルにおける、レドックス制御の関与の検討を行い、評価項目を以下のごとく設定し検討した:生存曲線、炎症性サイトカイン・ケモカイン(TNF-α, IL-1β, IL-6, KC, IL-12,IFN-γ等)酸化還元マーカー(血清 d-ROMs、尿中8-OHdG)肺組織 8-OHdGと4-HNEの免疫染色。その結果、チオレドキシン(TRX)は、抗サイトカイン・ケモカインの抑制のみでなく、抗酸化ストレスとしても効果があり、マウスの生存率を有意に改善した。これらは、今後H5N1の治療に応用可能となる可能性を示唆している。また、小児において2009pdm肺炎において急性期発現増強する遺伝子群は、神経症状を示した遺伝子群とは大きく異なることが示唆された。これは、インフルエンザ脳症に対する治療と重症肺炎に対する治療とは必ずしも同一ではないことが考えられ、これも重要な結果と思われた。
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今後の研究の推進方策 |
2009pdm重症肺炎において明らかになった急性期発現増強する遺伝子群についてSNPsおよびメチレーションによるepigeneticsの関与などについて検討を進める。またTRXのH5N1感染動物に対する炎症抑制効果についても研究していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に消耗品を購入し、主としてサイトカイン・ケモカイン・マウスの購入・酸化ストレスマーカーの測定キットの購入に充てる。
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