研究課題/領域番号 |
23659525
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森内 浩幸 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90315234)
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キーワード | 小児感染症学 / ウイルス |
研究概要 |
ヒト内因性レトロウイルス(HERV)がどのような疾患病態に影響を及ぼすのかを、川崎病(炎症性疾患)、急性白血病(悪性新生物)、HTLV感染(感染症)、そして慢性疲労症候群(非特異的慢性疾患)をモデルとして検討する。これらはいずれも病因や病態がよくわかっていない疾患であり、HERVがどのような関与をするかを調べ、その理解を深める。 平成24年度の研究成果 実際に研究に従事する予定であった大学院生が、一身上の都合で急に退学退職したため、当初予定していた研究計画は大幅に変更せざるを得なくなった。また、主要なテーマの一つであった「慢性疲労症候群」においては、(1)該当する患者がほとんど来院しなかったこと、(2)脚光を浴びていた「外来性レトロウイルスXMRVが慢性疲労症候群の原因」という発表が、「実験室内でのマウス由来レトロウイルスのcontaminationによる誤った結論」と判明し、研究の根幹が揺らいでしまった。 平成24年度は川崎病(炎症性疾患)におけるHERV関連スーパー抗原の関与を、Vβ2およびVβ7の発現から検討した。70人の川崎病患児と10人の健康児、7人のアレルギー性紫斑病患児、3人の化膿性髄膜炎患児、2人の新生児毒素性ショック症候群様発疹症(NTED)患児を対象に、CD4陽性T細胞のVβ2(外毒素TSSTが誘導する)またはVβ7(HERV関連スーパー抗原が誘導)陽性率を調べたところ、NTEDで高いVβ2陽性率(19.3%, 11.7%)を認めた以外は、どの疾患群でも健康児と大差なかった。Vβ7陽性率は全ての疾患群で健康児と大差なかった。ただ、川崎病患児内の臨床病型別に比べてみると、BCG痕発赤が認められた群でVβ2陽性率が高く、頚部リンパ節病変があった群でVβ7陽性率が高いという特徴が認められ、本疾患が病因的にheterogeneousであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前述のように、研究を担当する予定だった大学院生が、一身上の都合で予期せず退学退職することになってしまったため、進捗が著しく遅れてしまった。急遽別の教員によって代行することになったが、本来の業務との兼ね合いで進捗の速度は思うようにならなかった。そこで、もう一人別の教員にも研究の一部を担当してもらうこととしたが、やはり本来の兼務の多忙さから思うようなスピードアップはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
川崎病に関しては、HERV mRNAの検出と定量を進め、その結果とVβ7発現度との相関を調べていく。 その他の対象疾患に関しては、引き続き登録のステップを進め、Vβ7の発現とHERV mRNAの発現を調べて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
集まった検体についてリアルタイムPCR および リアルタイムRT-PCRを実施するため、さらに確認のためのsequencingの実施のために、QuantiTect Probe PCR kit 327千円、QuantiTect Probe RT-PCR kit 313千円、プローブやプライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの購入36千円、GS Junior Titanium emPCR/Sequencing kit等 468千円、検体保存用フリーザー350千円に未使用額の予算を充てる計画である。
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