研究課題/領域番号 |
23659527
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
櫻庭 均 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (60114493)
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キーワード | GM2ガングリオシドーシス / テイ-サックス病 / ザンドホッフ病 / GM2ガングリオシド / リゾ-GM2ガングリオシド / バイオマーカー |
研究概要 |
ヘキソサミニダーゼA(HexA)の活性低下により、脳神経系にGM2ガングリオシド(GM2)などの糖脂質が蓄積し、重篤な神経障害を来たすGM2ガングリオシドーシスが発生する。本症のバイオマーカーを開発するため、リゾ-GM2ガングリオシド(Lyso-GM2)に注目した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用したLyso-GM2測定法を確立し、GM2ガングリオシドーシス疾患モデルマウスと野生型マウスの脳組織中のLyso-GM2含量を測定した。野生型マウスの脳組織においては、Lyso-GM2は測定感度以下の含量であるのに対し、疾患モデルマウスでは顕著な含量増加が見られた。我々は、疾患モデルマウスに対して、酵素補充治療薬候補となる改変型HexB(Mod. HexB)を脳室内に投与し、その効果を解析した。その結果、GM2ガングリオシドーシス疾患モデルマウスの脳組織において、 HexA活性の増加とLyso-GM2含量の減少が認められることが示された。一方、薄層クロマトグラフィー(TLC)により、脳組織中のGM2含量を測定し、Lyso-GM2含量の値と比較した所、両者は、ほぼ並行した値をとることが明らかになった。さらに、GM2ガングリオシドーシス疾患モデルマウスの血漿中Lyso-Gb3濃度について解析した。本症疾患モデルマウス血漿中のLyso-Gb3濃度は、野生型マウスのそれに比べて明らかに高値を示したが、Mod. HexBの脳室内投与により減少した。 これらの実験結果から、血漿中Lyso-GM2濃度は脳中のLyso-GM2含量と同様に、GM2ガングリオシドーシスで増加するが、治療によって減少することが判明した。これらの結果から、Lyso-GM2は、GM2ガングリオシドーシスのバイオマーカーになり得ると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に基づき、研究初年度には、脳組織や血液試料中のLyso-GM2を、HPLCで簡便に測定する方法を確立した。さらに本法で測定している物質が目的物質に間違いないことを質量分析法で確認した。研究第2年度(本年度)は、前年度に確立した測定方法を用いて、GM2ガングリオシドーシス疾患モデルマウスの脳組織や血液において、Lyso-GM2含量が増加していること、酵素補充治療薬候補である改変型HexBの脳室内投与によりLyso-GM2含量が低下することを明らかにして、動物実験で、Lyso-GM2のバイオマーカーとしての有用性を示した。これらの結果から、研究は予定通り進行したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、Lyso-GM2の測定法を確立し、動物実験で、Lyso-GM2がGM2ガングリオシドーシスのバイオマーカーとして有用であることを示唆する結果を得た。研究第3年度(最終年度)には、これまでの診断研究で得られたテイ-サックス病、ザンドホッフ病やGM2活性化因子欠損症の患者および対照者由来の血液を試料として、その血中Lyso-GM2濃度を測定する。その解析結果と臨床および生化学的情報とを照合し、Lyso-GM2のGM2ガングリオシドーシス・バイオマーカーとしての有用性を証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Lyso-GM2測定のための装置は、既存のものを用いるため、研究費は、主にLyso-GM2測定や生化学的分析のための消耗費にあてる。
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