研究課題
進行性脳障害を来たす遺伝性難病であるGM2 ガングリオシドーシス(テイ‐サックス病、略称TSD及びザンドホッフ病、略称SDを含む)のバイオマーカーを発見する目的で、リゾGM2ガングリオシド(略称lyso-GM2)に注目した。研究初年度には、高速液体クロマトグラフィー(略称HPLC)法で、組織や血液中のlyso-GM2を定量する方法を確立するとともに、HPLC法で測定した物質が、真にlyso-GM2であることをMALDI-TOF質量分析法で証明した。さらに、SDモデルマウスを用いた動物実験で、本マウスの脳組織や血漿中のlyso-GM2含量が著しく増加していることを示した。研究第2年度には、SDモデルマウスの脳室中に、開発中の治療薬候補である改変型ヘキソサミニダーゼBを投与し、脳組織や血漿中で増加していたlyso-GM2の含量が薬剤投与により減少することを明らかにした。研究最終年度である今年度は、ヒト血漿を試料として、HPLC法でlyso-GM2濃度を測定した。健常人の血漿中lyso-GM2濃度は、2.0 nmol/L以下の値を示したが、SD患者では、3~13 nmol/L、TSD患者では、26~40 nmol/Lと増加がみられ、その程度は、疾患責任酵素であるヘキソサミニダーゼAの低下度にほぼ比例していた。これらの一連の実験結果から、血漿lyso-GM2の値は、TSDやSDの診断や治療の評価に役立つバイオマーカーに成り得ると結論された。さらに、lyso-GM2の定量を、迅速かつ高精度に行うため、タンデム型質量分析/(略称MS/MS)による測定法を検討した。本法は、試料の前処理が簡単で短時間でlyso-GM2の測定が可能であった。今後、さらに改良を加えることで、より優れたlyso-GM2測定法を確立出来るものと期待される。
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