研究課題/領域番号 |
23659530
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
荒川 正行 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 基盤生物研究部, 研究員 (90398868)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脊髄性筋萎縮症 / ポリオウイルス / 人工多能性幹細胞 / 運動神経細胞 |
研究概要 |
本年度は、ポリオウイルス(PV)が神経分化誘導過程に感染・複製する因子を解析する目的で多分化能を有する胚性腫瘍由来細胞株NTERA-2細胞においてレチノイン酸を用いて神経分化誘導を行い、70~80%のNeurofilament H陽性の神経様細胞に分化させた。このNTERA-2細胞の神経分化過程におけるPVゲノムの感染・複製に関わるポリオウイルスレセプター(PVR)及びneuronal polypyrimidine tract binding protein(PTBP)1及び2のmRNAの発現を調べたところ、PVR及びPTBP2の発現は神経分化誘導継時的に発現上昇が見られた。ところが、NTERA-2細胞は神経分化誘導させなくてもPVの感染が観察されたために、PVに感染する細胞(HeLa細胞、神経芽細胞腫SK-N-SH細胞)でPVRの発現を検討した。その結果、PVR mRNA及び蛋白質レベルともにHeLa細胞で発現が高く、NTERA-2細胞では低い傾向がありPVRの発現量には依存しないPVの感染が確認された。現在、ヒトiPS細胞株の培養条件を確立し、神経分化誘導過程におけるPVの感染条件の検討を行っている。 同時に、脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療を目指した運動神経向性であるPVベクターの可能性を追求するべく、PVゲノムの構造蛋白質をコードする領域を欠失した欠陥干渉粒子(DI粒子)にGreen Fluorescent Protein(GFP)をタグとして持つSMAの原因遺伝子であるSurvival of motor neuron 1(SMN1) mRNAを導入したPVベクターを作製した。このPV DI粒子をHeLa細胞に感染させたところ細胞内でGFP-SMN融合蛋白質として発現を確認した。現在、このPV DI粒子で導入されたSMN蛋白質の機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、多分化能を有するNTERA-2細胞を用いて、神経分化を誘導する系を確立し、これを基にして、ポリオウイルスの感染・複製に関わる因子を解析できるようになった。この研究から得られた結果を発展させ、現在、多分化能を有するヒトiPS細胞の培養を確立し、神経分化誘導の有無によるポリオウイルスの感染・複製機構の解析について順調に進捗している。 同時に、脊髄性筋萎縮症の新たな治療法の開発を目指したポリオウイルスベクターの作製では、ポリオウイルスゲノムの構造蛋白質をコードする領域を欠失した領域にGFPをタグとして持つ脊髄性筋萎縮症の原因遺伝子の一つであるSurvival of motor neuron 1(SMN1) mRNAを導入したPVベクターを作製した。このPVベクターをHeLa細胞に感染させると細胞内でGFP-SMN融合蛋白質を顕微鏡下で可視化でき、継時的にSMN蛋白質の発現と細胞内局在が確認することができるようになった。これらの結果から、外来遺伝子導入可能なポリオウイルスベクターを導入し細胞レベルにおける表現系を評価できるようになった。これまでの研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は、多分化能を有するヒトiPS細胞の培養方法と運動神経分化誘導方法を確立し、ポリオウイルスの感染・複製に関わる因子の観点からこれまでのポリオウイルスに感染する細胞との相違について詳細に解析を行う予定である。 今年度、遺伝性疾患である脊髄性筋萎縮症の新たな治療法を目指したポリオウイルスベクターの作製を行った結果、脊髄性筋萎縮症の原因遺伝子の一つであるSMN1mRNAを導入したポリオウイルスベクターの作製に成功した。このベクターには、ポリオウイルスゲノムの構造蛋白質をコードする領域を欠失した領域のN末端にGFPをタグとしたSMN1mRNAが導入された欠陥干渉粒子を作製することができた。このベクターを用いることによってSMN蛋白質の細胞内の挙動及び機能解析が可能となるので、今後、様々な細胞を用いてSMN蛋白質の機能解析を行っていく予定である。さらに、脊髄性筋萎縮症患者由来iPS細胞を用いた際のポリオウイルスベクターの評価系を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、引き続きヒトiPS細胞を維持しなければならないために高価な専用培地やサプリメントを購入する。また、新たにヒトiPS細胞株の購入、各種抗体、抗体作製のためのペプチドなどを購入する。また、ヒトiPS細胞や他の多能性幹細胞を運動神経分化誘導するための専用培地を作製するための培地組成に必要な生理活性物質、サイトカイン、成長因子の購入、さらに運動神経分化マーカーの発現を調べるためのPCR用プライマー、アフィニティーカラムや蛋白精製用ビーズなどを購入することを計画している。これらの研究成果を国内外における学会発表を行う旅費に使用する予定である。
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