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2011 年度 実施状況報告書

先天性大脳白質形成不全症を引き起こす分子機序とゲノム脆弱性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23659531
研究機関独立行政法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

井上 健  独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第二部, 室長 (30392418)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード国際情報交流 / ゲノム病 / ペリツェウス・メルツバッハ病 / 神経遺伝学 / 小児神経学 / アレイCGH
研究概要

Pelizaeus-Merzbacher病(PMD)は、中枢神経系の髄鞘形成不全を特徴とする遺伝性難治性神経疾患である。PLP1遺伝子のゲノム重複がPMDの最も頻度の高い遺伝子変異であるが、なぜPLP1遺伝子にゲノム重複変異が高頻度におこるのか、その機序については不明である。我々は、PLP1ゲノム領域に構造変化がおこりやすい構造的な脆弱性があるからではないかと仮説した。そこで本研究では、多数のPLP1重複のDNA検体を用いて、ゲノム異常の構造を高解像度で解析することにより、PLP1重複がおこる共通の機序を明らかにすることにより、この仮説を検証する。本研究から得られる知見は、PMDのみならず自閉症や精神遅滞などゲノム領域の構造変化が原因で起こる多くの小児神経疾患に共通するゲノム変異の機序の解明に寄与すると思われる。本年度は、PLP1遺伝子を中心に5Mbのゲノム領域をカバーする高密度オリゴCGHアレイを設計、作製した。これはアジレント社の専用ソフトeArrayを用いた。PLP1重複によるPMD患者の検体は、研究協力者のフランスINSERUMのBoespflug-Tanguy教授より70症例分のDNAの譲渡を受けた。このアレイを用いて、本年度は35症例分について、正常男性DNAを対照にもちいた解析をおこなった。その結果、すべての症例において、PLP1遺伝子領域の重複を検出することができた。いくつかの症例では、重複領域内にコピー数の変化を認め、当初より目的としていた高感度のコピー数検出が可能であることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していたPLP1重複症例のDNA検体の収集、カスタムメイド高密度オリゴアレイの設計と作製、これを用いた症例の解析、そして各症例に関するゲノムコピー数解析をほぼ予定通り実施することができた。シグナルの検出感度や重複領域の確定に関する正確性も良好なデータを獲得することができた。

今後の研究の推進方策

今後は、残りの35症例について、同様に解析を進めていく。さらに、各症例から得られたデータを統合して比較解析を行い、ゲノム組み換えがおこる頻度の高い領域を同定し、この領域のゲノム構造の特性を明らかにしていきたい。こういった解析は、多数例の解析を行うことにより始めて可能になるが、本研究は非常に希少な疾患について多数例での解析を行うことができる点で、特徴的である。

次年度の研究費の使用計画

今年度はほぼ予定通りに予算を執行した。消耗品の購入が予定より少なかったのは、試薬などを他研究課題と共用することにより、節約することができたためである。次年度は、主にアレイCGH解析に関する消耗品、定量PCRなど、分子生物学的解析に関する試薬、細胞培養などにかかる経費が増加する見込みである。また、成果発表を国内外の学会で行うための旅費の支出を予定する。一方、人件費、謝金は、当初の額より少なくなる予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Brain N-acetylaspartate is increased in mice with hypomyelination2012

    • 著者名/発表者名
      Takanashi J 他5名
    • 雑誌名

      J Magn Reson Imaging

      巻: 35 ページ: 418–425

    • DOI

      doi:10.1002/jmri.22817

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of curcumin in a mouse model of Pelizaeus-Merzbacher disease.2012

    • 著者名/発表者名
      Yu L-H 他9名
    • 雑誌名

      Mol Genet Metab

      巻: 106 ページ: 108-114

    • DOI

      doi:10.1016/j.ymgme.2012.02.016

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mutations in POLR3A and POLR3B encoding RNA polymerase III subunits cause an autosomal-recessive hypomyelinating leukoencephalopathy2011

    • 著者名/発表者名
      Saitsu H, Osaka H, Sasaki M, Takanashi JI, Hamada K, Yamashita A, Shibayama H, Shiina M, Kondo Y, Nishiyama K, Tsurusaki Y, Miyake N, Doi H, Ogata K, Inoue K, Matsumoto N
    • 雑誌名

      Am J Hum Genet

      巻: 89(5) ページ: 644-51

    • DOI

      doi:10.1016/j.ajhg.2011.10.003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genome-wide association study identifies HLA-DP as a susceptibility gene for pediatric asthma in Asian populations.2011

    • 著者名/発表者名
      Noguchi E 他33名
    • 雑誌名

      PLoS Genet.

      巻: 7 ページ: -

    • DOI

      doi:10.1371/journal.pgen.1002171

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 先天性大脳白質形成不全症:Pelizaeus-Merzbacher病とその類縁疾患2011

    • 著者名/発表者名
      井上 健 他6名
    • 雑誌名

      脳と発達

      巻: 43 ページ: 435-442

    • 査読あり
  • [学会発表] 小胞体ストレスを標的とした Pelizaeus-Merzbacher 病に対する治療薬の確立2011

    • 著者名/発表者名
      守村 敏史 他
    • 学会等名
      第34回日本神経科学大会
    • 発表場所
      横浜、パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011年9月15日
  • [学会発表] 先天性大脳白質形成不全症の統合的研究の推進2011

    • 著者名/発表者名
      井上 健 他
    • 学会等名
      第56回日本人類遺伝学会総会
    • 発表場所
      千葉、幕張メッセ
    • 年月日
      2011年11月12日
  • [学会発表] フレームシフト変異によるPLP1mRNAの不安定化:軽症型Pelizaeus-Merzbacher病の分子病態2011

    • 著者名/発表者名
      沼田 有里佳 他
    • 学会等名
      第56回日本人類遺伝学会総会
    • 発表場所
      千葉、幕張メッセ
    • 年月日
      2011年11月12日
  • [学会発表] Pelizaeus-Merzbacher-like-disease におけるGJC2プロモーター変異の分子病態解析2011

    • 著者名/発表者名
      後藤玲央 他
    • 学会等名
      第56回日本人類遺伝学会総会
    • 発表場所
      千葉、幕張メッセ
    • 年月日
      2011年11月10日
  • [学会発表] A comprehensive nation-wide epidemiological survey for Pelizaeus-Merzbacher disease and associated disorders in Japan2011

    • 著者名/発表者名
      Inoue K  他
    • 学会等名
      12th International Congress of Human Genetics
    • 発表場所
      Montreal Convention Centre, Montreal, Canada
    • 年月日
      2011年10月13日
  • [学会発表] 先天性大脳白質形成不全症の診断基準と疾患分類の作成

    • 著者名/発表者名
      井上 健 他
    • 学会等名
      第53回日本小児神経学会
    • 発表場所
      横浜、パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011年5月26日
  • [学会発表] A SOX10 binding site mutation in GJC2 promoter causes Pelizaeus-Merzbacher-like disease.

    • 著者名/発表者名
      Osaka H 他
    • 学会等名
      第53回日本小児神経学会
    • 発表場所
      横浜、パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011年5月26日

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公開日: 2013-07-10  

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