小児神経領域において、てんかん・けいれんと精神遅滞は大きな割合を占める。これらの症状は互いに関連しており、原因の共通性が示唆される。その共通する病態は脳神経回路の機能障害である。このような脳神経回路の機能障害の原因のひとつとして、大脳皮質形成過程における神経細胞の移動障害が明らかとなっている。 近年、私達が研究を進めてきたコシャペロン(SIL1)が関与するヒト遺伝子変異疾患“マリネスコ・シェーグレン症候群”においても てんかんや精神遅滞が存在することから、今回、子宮内胎仔脳遺伝子導入による遺伝子発現のノックダウンとそのレスキュー実験を行い、シャペロンならびにコシャペロンが大脳皮質形成過程の細胞移動において重要な役割を果たしている可能性を見出した。すなわち、SIL1の発現抑制により大脳皮質神経細胞の移動障害がおこり、大脳皮質構築の異常が示された。この異常は正常型SIL1の発現により改善されるが、マリネスコ・シェーグレン症候群を引き起こすSIL1の変異体を発現させても改善しなかった。これまでシャペロンあるいはコシャペロンが、大脳皮質形成過程でどのように関与するかという報告はなく、脳神経発達障害における新たな視点を提起できると考えている。
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