我々は、従来の異種動物であるマウスのストローマ細胞との共培養によるヒトES細胞から造血/血液細胞への分化誘導系では、ヒト胎生期造血を正確に再現していないと考えられる。一方、ヒト成人骨髄ストローマ細胞との共培養ではヒトES細胞の造血/血液細胞への困難であることから、ヒト胎生期造血を正しく再現するヒトES細胞から造血/血液細胞への分化誘導系の構築が必要と考えられた。そこで我々は、ヒトES細胞自身からストローマ細胞を分化誘導し、このストローマ細胞との共培養によりヒトES細胞を造血/血液細胞へ分化誘導することを試みた。 まず、ヒトES細胞をゼラチン・コート・ディッシュに播種し、ヒト血清あるいは多血小板血漿を含む培養液で培養し、3~4日毎のメディウム交換と2~3週毎の継代を行った。その結果、培養開始後6~8週でストローマ細胞が樹立された。樹立されたストローマ細胞は、CD105+、CD166+、SSEA-4dull、CD45-、CD34-、CD31-で、軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞に分化可能な間葉系幹細胞であることが確認された。 そこで、ヒトES細胞をこの自己ヒトES細胞由来間葉系幹細胞と、種々のサイトカイン存在下で2週間共培養したところ、種々の造血前駆細胞が出現した。これらの造血前駆細胞を血液細胞培養コロニー法で培養したところ、赤血球、好中球など様々な血液細胞が出現した。 今回我々が開発した自己ヒトES細胞由来間葉系幹細胞との共培養によるヒトES細胞から造血/血液細胞への分化誘導法は、ヒト胎生期造血をよく再現しており、ヒト胎生期造血の解析に有用と考えられた。
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