研究課題/領域番号 |
23659537
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
林 聡 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 研究員 (60425717)
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研究分担者 |
梅澤 明弘 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 部長 (70213486)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 免疫寛容 / 細胞移植 / 前臨床研究 / 胎児治療 / モデルマウス / 低侵襲 |
研究概要 |
遺伝性疾患のなかには、胎児期に病状が進行して、出生時には不可逆的な症状を呈している疾患も多い。血液疾患のなかにはすでに胎児期での造血幹細胞移植が適応されているものもあるが、胎児期に行う細胞移植は、(1)胎児期から進行する病態の増悪を軽減する、(2)免疫寛容が成立することにより抗癌剤等の免疫抑制剤が不要である、(3)生後に比べて細胞数が少なくてよい、(4)癌化しないことが確認されている細胞をあらかじめ準備して使用することができる等の利点がある。特に造血幹細胞が生着した場合においては、同じドナー由来の細胞や臓器が生後に拒絶されないことは特筆すべき特徴である。最近、iPSから造血幹細胞を作製する技術が確立されたと報告されており、血液疾患に関しては生後のみならず、胎児期からの移植治療の展望が広がっている。本年度は、ドナー造血幹細胞を胎児期の疾患動物に生着させて直接治療効果を確認するだけではなく、二次的なドナー由来の間葉系幹細胞の移植により、新しい治療法の確立を目的として研究を実施した。具体的には既に確立された手法により、子宮内造血幹細胞移植治療のマウスモデルでキメラマウスを作成した。このプロトコールでは、通常の成体マウスにおいて移植治療の効果が得られないことも確かめ、さらにホストにおいては侵襲の少ないことを確認した。具体的には、ドナーマウスの骨髄から採取した造血幹細胞を含む単核球を20×106細胞/胎児に調製した後、胎齢14日目のホストマウス胎仔の卵黄嚢静脈に投与した。胎齢20日目に分娩となった新生児マウスを飼育し、生後4週間目となる時期にマウス末梢血を採取し、ドナー特異的な抗体を結合させたのち、フローサイトメトリーを用いてドナー細胞の生着率について分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においてはモデルマウスの作成及び維持が重要である。実験手技に関して問題なく会得できており、キメラマウスにおける検討は順調に推移しているといえる。移植細胞の生着率についての検討を開始したところであり、ドナー特異的抗体の探索が課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
ドナー細胞が生着したキメラマウスを用いて、その疾患マウス(先天性代謝異常症、筋ジストロフィー、骨形成不全症)に出現する症状の改善の有無と程度について検討を行う。これは、ドナー細胞生着率と症状改善の程度に関しての検討だけではなく、組織染色や画像による評価を行うものである。ドナー細胞が生着しても臨床症状が改善されない場合、さらにドナー細胞の生着率を増加させるように、生後8週目のキメラマウスに骨髄造血幹細胞の2次移植を行う。その後、同様にドナー特異的な抗体を用いてドナー細胞の生着率を分析し、その疾患マウスの症状の改善の有無と程度について分析を行う。また、同じドナーマウスから得られた間葉系幹細胞を免疫寛容が成立している疾患マウスに投与して、症状の改善に関して検討する。また、臍帯血・子宮内膜・月経血・胎盤・脂肪などのヒト組織を間葉系幹細胞の供給源として、ヒト血清ならびにヒト液性因子のみ、あるいは無血清培地を用いた培養法の開発を目指す。得られたヒト幹細胞に対して、網羅的発現遺伝子解析(Affymetrix社GeneChipによる解析)ならびにモノクローナル抗体を用いた既知の分子発現解析を行う。使用するモノクローナル抗体は、ヒトES細胞のマーカーとして知られているSSEA分子群、TRA1、Oct-3/-4、STRO-1等の間葉系幹細胞候補マーカーも含む。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度と同様の実験試薬、実験器具等の消耗品、マウス購入費、外注解析費用として使用する。研究計画に大きな変更はなく、当初の予定通りの予算執行となる。
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