先天性代謝異常症などの遺伝性疾患のなかには、胎児期にすでに病状が進行して胎児由来の細胞を増殖させて遺伝子導入するなどの時間的な猶予がない疾患も多い。細胞治療はあらかじめ準備することが可能であり①胎児期に進行する病態の増悪を軽減する②免疫寛容が成立しているため抗癌剤等の免疫抑制剤が不要である③細胞数が少なくてよい④癌化しないことが確認されている細胞を使用することができる等の利点がある。特に造血幹細胞が生着した場合においては、同じドナー由来の細胞や臓器が生後に拒絶されないことは特筆すべき特徴である。本研究では、ドナー造血幹細胞を胎児期の疾患動物に生着させて直接治療効果を確認、二次的なドナー由来の間葉系幹細胞の移植で、新しい治療法を確立することが目的である。胎児期に行われる再生医療に対しては、既に確立されている幹細胞移植を応用する意義は大きい。 マウスを用いた胎児幹細胞移植治療モデルによりキメラマウスの作製を試みた。このキメラマウスに対し、侵襲の少ないプロトコールを用いた細胞移植によりドナーキメリズムの増幅について検討した。ドナーマウス由来の骨髄単核球をBALB/cマウスおよび代謝異常症マウス、筋ジストロフィーマウス胎仔腹腔内もしくは卵黄嚢静脈内へ移植し、その生着率の向上や治療効果を検討した。臍帯血・子宮内膜・月経血などのヒト組織から間葉系幹細胞を誘導し移植に供した。ヒト血清ならびにヒト液性因子のみ、あるいは無血清培地を用いた培養法を検討した。得られたヒト幹細胞に対して、網羅的発現遺伝子解析ならびにモノクローナル抗体を用いた既知の分子発現解析を行った。
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