研究概要 |
表皮水疱症は先天的に皮膚構造蛋白に異常を有することで,皮膚の脆弱性をきたす難治性皮膚疾患である。現時点で根本的かつ有効な治療法は確立されていない。本研究の目的は,もっとも頻度の高い表皮水疱症である,栄養障害型表皮水疱症に対する根本的治療法として,骨髄由来細胞および幹細胞移植療法の臨床治療の有用性を,ヒト化蛋白モデルマウスを用いて検討するものである。 レシピエントとなる不完全VII型コラーゲンヒト化マウス(hCOL7-RDEBマウス、表皮水疱症モデルマウス)およびCOL7完全ヒト化マウス(K14プロモーターおよびCMV-Tgマウス)を繁殖し、放射線照射の上でGFP+Tgマウスの骨髄細胞を経静脈移植した。生着を末梢血フローサイトメトリーで確認した上で、創傷治癒部の皮膚を検討したところ、わずかにGFP陽性細胞が真皮に確認された。GFP陽性表皮角化細胞は約0.2%で確認された。定性RT-PCRおよびreal-time RT-PCRにてマウスCOL7mRNAの発現を検討したところ、発現が一部確認されたが、negative controlと統計学的有意差を認めなかった。また、免疫染色では8匹中1匹において、ごくわずかにマウスCOL7が基底膜部に発現しているのを確認した。微細構造観察にて移植後皮膚において、係留線維(COL7)の増強と捉えられる所見が観察された。以上より、通常の移植手技においてはCOL17とは異なり、COL7発現は低レベルに留まるであろうことが推測された。そこで、現時点で骨髄細胞および間葉系間質細胞が皮膚への遊走・分化を促進させると考えられているHMGB1やCCL27、CCL19を併用した移植実験系を施行した。移植・生着後に創傷作成を行う時点で、これらの因子を局所塗布、局所注射および経静脈投与し、上皮化部位のGFP陽性細胞の変化を検討する。本実験系については現在解析中である。
|