研究概要 |
炎症性皮膚疾患の病態解析において、これまだあまり顧みられてこなかった浸潤細胞の組織学的局在部位の相違による遺伝子発現変化をlaser microdissectionの手法を用いて明らかにすることを目的に研究をおこなった.昨年度は,まず,円形脱毛症患者より採取した組織を用いて,通常のreal-time PCR法により,浸潤細胞のサイトカイン遺伝子,転写因子などの遺伝子発現が解析可能かを検討した.コントロールとしては,抗CD3/CD28抗体を用いてin vitroで刺激したT細胞より採取したRNAを用いた.その結果,一部のサンプルで,IL-10,IL-13, INF-g等のサイトカイン遺伝子, GATA3, Tbet, RORgamma(t), FoxP3の発現を定量することができた.また,in vitro刺激T細胞から採取したmRNAと比較すると,円形脱毛症病変部サイトカインのmRNA発現パターンは,IL-13優位,IL-10,IFN-g発現低下が認められた.また,転写因子では,GATA3の発現亢進が亢進してたが,FoxP3に関しては明らかな抑制は認められなかった.しかし,この解析からも,炎症性皮膚疾患病変部の微細な解剖学的部位による違いの検討性が示唆され,皮膚筋炎組織をlaser microdissectionを行いmRNAを回収し遺伝子発現を検討した.まず,非定量的PCRによりG3PDH遺伝子の発現を検討したところゲル電気泳動,エチジウムブロマイド処理により明らかなバンドを検出できた.次に,定量的PCRをおこなったところ,局所におけるG3PDHは,10枚の切片から約50コピー回収できることが明らかとなった.まだ,サイトカイン発現を定量する段階には至っていないが,切片数を増加することにより解析が可能となることが予測される.現在,検討中である.
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