研究概要 |
(目的)前年度の研究結果からHSVは表皮細胞にCathelicidin(LL37)を誘導することによってHIVの生体内侵入を促進している可能性が示唆された。そこでこれらの知見をヒト皮膚を用いた実験系で確認し、またsiRNAを用いてLL37をノックダウンした表皮細胞を作製し、この表皮細胞にHSVを感染させてもランゲルハンス細胞のHIV感染に影響を与えないことを検証した。 (方法)1.HSV-2をヒト皮膚水疱蓋より作成した表皮シートに2時間暴露後、HIV BaL(R5-HIV)あるいはHIV AD8, HIV JRFLに2時間感染させ、7日後、HIV感染mLC数を定量する。2.さらに、siRNAを用いてLL37をノックダウンした表皮細胞を作製し、正常表皮細胞とともにHSV-2に24時間曝露し、その培養上清の存在下でのランゲルハンス細胞のHIV感染への影響をHIV p24抗体染色およびフローサイトメトリーを用いて検討した。 (結果)1.HSVをHIV曝露前の表皮水疱蓋に処理すると、表皮内ランゲルハンス細胞の有意な感染増強がHIV BaL, HIV AD8, HIV JRFLのいずれのR5 HIVにおいても観察された。2.LL37をノックダウンした表皮細胞のHSV感染後の培養上清によるランゲルハンス細胞のHIV感染増強効果は正常表皮細胞に比べて有意に低いことが証明された。3.さらにこのHIV感染増強効果はランゲルハンス細胞表面のHIVレセプターCD4/CCR5発現量をupregulateさせることによることもわかった。 (意義)これら1~3の結果より、HSVは表皮細胞にLL37を誘導し、さらにLL37はランゲルハンス細胞表面のHIVレセプター発現を上昇させてHIVに対する易感染性を増加させることで、HIVの生体内侵入を促進している可能性が示唆された。
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