研究概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)ではフィラグリンの遺伝子変異が病気の発症リスクを大いに上昇させることが報告されてから間もなく、私たちは本邦のADにおいてもフィラグリンの遺伝子変異が病気の発症に関係があることを初めて報告した(Nomura T et al, J Allergy Clin Immunol 2007)。さらに、本邦では約27%もの高頻度のADの患者にフィラグリンの遺伝子変異が存在することを明らかにし、報告した(Akiyama M. Br J Flaky tail mouseはアトピー性皮膚炎モデルマウスでフィラグリンに遺伝子変異があり、フィラグリンの発現が完 全に欠損していないものの著しく低下している。 Thymic stromal lymphopoietin (TSLP)はADのKCから分泌されるサイトカインで、ランゲルハンス細胞を刺激して、Th2ケモカインであるCCL17とCCL22を放出させて、Th2細胞をリクルートさせる。このTh2細胞はIL-10を産生せずTNF-αを産生する炎症性Th2細胞とよばれ、ADの病態を形成する。このようにTSLPはKC由来のADの病態を形成する最も重要なサイトカインの一つとして位置づけられているが、どのような刺激がTSLPを誘導するかについては未解明である。 フィラグリンの遺伝子変異のあるADとFlaky tail mouseのKCでは、フィラグリンの発現量が低下していることから、変異フィラグリン蛋白質の折りたたみがうまくいかず、小胞体ストレス応答や小胞体ストレス関連分解による変異フィラグリンの分解がADのKCとこのAD マウスモデルのKCで起こっていることが予測された。本年度はアトピー性皮膚炎患者の遺伝子変異解析と変異を持つ患者とそうでない患者における皮疹部のTSLPの発現量について検討を行なった。
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