研究課題/領域番号 |
23659554
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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研究分担者 |
大多 茂樹 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (20365406)
谷口 智憲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40424163)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / miRNA / 免疫逃避 / 診断 / バイオマーカー |
研究概要 |
本研究では、ヒト悪性黒色腫におけるmicroRNA 、特にmiR-222の免疫抑制・抵抗性への関与の解明とそれに基づいた新規治療法開発の可能性の検討、および各種臨床病理学的因子との相関解析によるmiR-222の血液バイオマーカーとしての可能性を検討する。本年度は、ヒト悪性黒色腫細胞株におけるmiR-222の発現を確認し、多数の悪性黒色腫患者血清を用いて、定量PCR法を用いて血中miR-222を測定した。その結果、悪性黒色腫患者の血清中には、健常人に比べ有意に高いmiR-222が検出された。また、ステージが進行するにつれて、血清中miR-222が高くなる傾向、および、遠隔転移が存在する患者の血清中には、転移がない患者に比べて、miR-222が高い傾向が認められた。したがって、miR-222は 悪性黒色腫患者における血液腫瘍マーカーとなる可能性が示唆された。miR-222の免疫抑制性・抵抗性への関与の検討においては、予想に反して、脳腫瘍とは異なり、miR-222の高発現は、がん細胞のT細胞による認識や樹状細胞によるT細胞活性化に重要なICAM-1の低下をきたさなかった。しかし、悪性黒色腫細胞株を用いたmiR-222の高発現、発現低下実験により、miR-222は、ヒト悪性黒色腫では転写因子の活性化を介して、複数の免疫抑制性サイトカインの産生を誘導することを明らかにした。したがって、miR-222は 悪性黒色腫では、脳腫瘍とは異なる機序により、担がん生体の免疫抑制病態に関与することが示唆され、次年度以降にその詳細な分子機構の解析とともに、診断や治療などへの応用に向けて、その臨床的意義について解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、miR-222が、悪性黒色腫患者において、血液腫瘍マーカーになる可能性を示すことができた。また、miR-222が、転写因子の活性化を介して、複数の免疫抑制性サイトカイン産生を誘導し、悪性黒色腫患者における免疫抑制病態に関与する可能性を明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
miR-222は悪性黒色腫患者における血液腫瘍マーカーとなる可能性を示すことができたが、miR-222の免疫抑制性・抵抗性への関与の研究においては、当初の予定とは異なり、ICAM-1の調節作用ではなく、免疫抑制性サイトカイン産生の調節作用に焦点を当てて研究を進める。その分子機構、および、血清miR-222と免疫抑制性サイトカインの関係なども含めて、その臨床的意義の解明を進め、悪性黒色腫における診断や治療に応用可能かどうかを検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
エクソソームを分離するために、超遠心法、エソソーム分離キット、FACSによるソーティング、それに伴う抗体や分離キットが、またエクソソームを定量するためのキットが必要である。miR222の抑制することによりその作用機序を解明するために、RNAiの試薬、導入用試薬、細胞培養のための試薬/器具が必要である。免疫抑制性サイトカインの調節機構を解析するためには、各種抗体、サイトカイン測定用のELAISAキット、定量PCRで用いる特異的プライマーの購入が必須である。細胞培養免疫療法の抗腫瘍効果等を評価するために多くの実験動物が必要であり、実験動物の費用は必須である。
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