研究課題/領域番号 |
23659554
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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研究分担者 |
大多 茂樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20365406)
谷口 智憲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40424163)
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キーワード | 悪性黒色腫 / miRNA / 免疫逃避 / 診断 / バイオマーカー |
研究概要 |
本研究では、ヒト悪性黒色腫におけるmicroRNA 、特にmiR-222の免疫抑制・抵抗性への関与の解明と新規治療法開発の可能性の検討、および血液バイオマーカーとなる可能性を検討した。本年度は、miR-221/222によるヒト悪性黒色腫細胞からの免疫抑制性サイトカイン産生機構を明らかにした。miR-221/222高発現ヒト悪性黒色腫細胞にanti-miR-221/222 inhibitorを作用させると、STAT3のリン酸化が抑制されて、その下流にある樹状細胞抑制作用をもつIL-6とVEGFの産生が低下した。逆にmiR-221/222低発現ヒト悪性黒色腫細胞にpre-miR-221/222を導入するとIL-6とVEGFの産生が上昇した。したがって、悪性黒色腫細胞のmiR-221/222発現増加は悪性黒色腫患者の免疫抑制に関与する可能性が示された。また、ヒト悪性黒色腫細胞培養上清中のエクソソーム中には、がん細胞中のmiRNA発現に相関した量のmiR-221/222が含有されていることを見いだした。miR-221/222含有エクソソームを培養樹状細胞に加えると、樹状細胞上のT細胞活性化能に重要なICAM-1の発現が低下したので、悪性黒色腫細胞由来のmiRNA含有エクソソームを介した新たな免疫抑制機序の可能性が示された。今後、in vivoで同様な現象が認められるか検討する必要がある。以上の結果から、本研究では、ヒト悪性黒色腫では、miR-221/222高発現によるSTAT3シグナル活性化を介した免疫抑制性サイトカインの産生、さらに悪性黒色腫から分泌されるmiR-221/222含有エクソソームによる樹状細胞障害という異なる機序により、miR-221/222は悪性黒色腫患者における免疫抑制状態の誘導や免疫療法などの治療への抵抗性をきたす可能性が示された。
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