研究課題
本研究では、平成23年度において、in vivo蛍光イメージング装置およびpositron emission tomography(PET)を用いて、神経幹細胞の成体サル脳内における動態をin vivoで可視化するための神経幹細胞特異的な標識技術の開発を行った。ここでは、神経幹細胞特異的に賦活されるCD133プロモーターを、カニクイザルBACライブラリーよりクローニングし、その下流に緑色蛍光タンパク質(EGFP)、あるいは中性アミノ酸トランスポーター遺伝子を挿入したレンチウィルスベクターを構築することで、感染神経幹細胞において特異的にそれらタンパク質を発現するレンチウィルスを調製した。それを、ラット胎仔海馬歯状回より初代培養した神経幹細胞に感染させ、当該神経幹細胞を生体ラット脳室下帯に移植した後に、in vivo蛍光イメージング装置およびpositron emission tomography(PET)を用いて、生体脳内における移植神経幹細胞の増殖・遊走をin vivoで検出画像化することを行った。ここでは、加えて、神経幹細胞を移植後にosmotic pumpにより、既知の神経幹細胞増殖因子であるEGFとbFGFを、神経幹細胞の移植に引き続き脳室下帯に継時投与し、その増殖と遊走をin vivo蛍光イメージング装置を用いて生体脳で経時的に観察した。その結果、EGFとbFGFに応答性に移植神経幹細胞が増殖するとともに、神経幹細胞が非移植側の大脳半球にまで移動することが確認された。24年度では、成体脳で神経新生に携わる内因性の神経幹細胞の動態を、in vivo蛍光イメージング装置及びPETによりin vivoで可視化する技術の開発を行うことを予定している。
2: おおむね順調に進展している
はじめに、培養神経幹細胞をを用いて、nestinプロモーターの下流にアミノ酸トランスポーターLAT4遺伝子を配置したレンチウィルスベクターを作製した。それより調製したウィルス粒子を、培養神経細胞に感染させLAT4を発現させた。この方法で、汎用PETトレーサー [18F]FMTを培地に添加し神経幹細胞を標識できることのめどが立ったため。
本年度は、前年度に確立した神経幹細胞の短期評価系と同一のメカニズムに基づいて、成体マウス脳内での神経新生の解析をin vivoで行うことができる神経幹細胞の長期動物評価系を創出する。 まず、本研究では、nestinプロモーターの下流にLAT4遺伝子を配置し、神経幹細胞特異的にLAT4を発現するノックインマウス(nes-LAT4マウス)を常法に従い作製する。このマウスで、[18F]FMTを末梢から投与し、それを神経幹細胞に特異的に取り込ませることで、神経幹細胞の脳内動態をin vivoでPETにより経時的にモニタリングする。そして、この長期動物評価系の、神経幹細胞障害が病態生理に与るとされる精神疾患や認知症等の幹細胞治療への応用を図るために、母子分離ストレスを負荷してnes-LAT4マウスからうつ病マウスモデル(nes-LAT4/Depマウス)を作製し、あるいは、nes-LAT4マウスと、neuregulin-1(NRG1)変異体を発現する統合失調症マウスモデルを交配してnes-LAT4マウスの統合失調症モデル(nes-LAT4/Schiマウス)を得ること等により、病態マウスでの神経幹細胞長期評価系を創出する。
H23年度の繰り越し分は4月に支払いがなされた。24年度では、成体脳で神経新生に携わる内因性の神経幹細胞の動態を、in vivo蛍光イメージング装置及びPETによりin vivoで可視化する技術の開発を行うことを予定しているため、トレーサー費用として40万円、動物購入費などで40万円を予定している。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
J Neurosci
巻: 31 ページ: 11193-11199
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