本年度では、DepマウスあるいはSchizoマウスに抗うつ薬や向精神薬等を投与し、それら医薬の薬効機序に成体脳神経新生賦活が与る仕組みを解析した。その結果、Depマウスで抗うつ薬の投与後、[18F]FMT の集積の増加がPETを用い観察され、SGZでの神経幹細胞増殖が賦活されたことが確認された。一方、Schizoマウスについては、向精神薬によるSVZとSGZでの成体脳神経新生の賦活は確認されなかった。これらの結果は、抗うつ薬の薬効機序に成体脳神経新生が与るとともに、神経幹細胞障害が、特に大うつ病の病態生理の分子的基礎を介して惹起することを示唆している。今後は、本研究による分子イメージング技術を種々の精神・神経疾患病態モデルサル等に適用することで、薬剤の成体脳神経新生賦活効果を評価しながら、神経症状を改善する医薬候補化合物のスクリーニングを行うことが俟たれている。
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