研究課題
1.<研究目的> リンパ芽球様細胞株を検体とした統合失調症のトランスクリプトーム解析を実施し、分子病態に関与する遺伝子発現変化とスプライシングバリアントを網羅的に同定する。同定された遺伝子群の発現定量化とスプライシングを制御する遺伝子座位の検索を行い、統合失調症との関連を遺伝統計学的に検証する。これらを統合し、診断・治療法の開発へ繋がりうる成果取得を目指す。2.<研究方法> 統合失調症患者・健常者各30名より末梢血を採取、リンパ球の分離精製後にエプスタイン・バールウィルスにて不死化し、リンパ芽球様細胞株を調製した。リンパ芽球様細胞株よりtotal RNAを抽出し、Exon Arrayによる遺伝子発現解析、スプライシングバリアント検索を実施した。3.<研究結果および考察> Exon Arrayによる解析の結果、1115遺伝子について発現量変化が認められ、統合失調症を含む精神神経疾患と関連が深い遺伝子が多く見出された。上位45遺伝子のクラスタリング解析の結果、患者群と健常者群を区別するクラスターに分類された(精度87.5%)。エクソンレベルの解析では、1327エクソンについて発現量変化が認められ、軸索伸長、イオンチャネル、細胞骨格系など統合失調症と関連する分子機能を有する遺伝子群が見出された。上位197エクソン(187遺伝子)のクラスタリング解析の結果、両群間を区別するクラスターに分類された(精度93.3%)。スプライシングバリアント解析では、1743遺伝子について両群間で有意な変化が認められた。これまでの研究成果として、統合失調症の病態像を反映する候補遺伝子群が抽出された。今後は詳細な定量解析や遺伝子機能の明確化により再現性および妥当性の検証が必要である。
2: おおむね順調に進展している
トランスクリプトーム解析の手法として次世代シーケンサーを予定していたが、PCRを工程に含むRNA-seqはアレイ解析に比して発現量解析の信頼性が落ちる可能性が示唆されている。本研究においては研究目的を確実に遂行するため、これまでに実績のあるExon Arrayを代用した。その結果、年次計画に基づき、疾患を特徴づける遺伝子の発現変化を遺伝子レベル、エクソンレベルで抽出することができた。
1.トランスクリプトーム解析・全ゲノム関連解析の結果に基づいて、統合失調症の病態に関わる遺伝子・分子群を特定する。2.候補遺伝子・分子群を基に、細胞モデル・動物モデルを作成し、統合失調症の分子病態の詳細を検討する。3.候補遺伝子・分子群を基に、診断・治療法に有用なバイオマーカーの開発を行う。
トランスクリプトーム解析および全ゲノム関連解析の実施およびその再現性確認に要する諸経費に使用する。
すべて 2012 2011
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