研究課題
常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)の責任遺伝子に相同するCHRNA4変異遺伝子(S284L変異)を導入したトランスジェニックラット(S284L-TG)では、PDGFプロモーターを採用したが、創薬モデルにはラットChrna4遺伝子のナチュラルプロモーターによる発現制御は必須であり、S284L変異型ヒトCHRNA4遺伝子に相同する、S286L型ラットChrna4遺伝子とナチュラルプロモーターにLoxP配列を導入したS286L-TGを作出した。この、S286L-TGは表現的妥当性・構造的妥当性・予測的妥当性の検証が完了した。S286L-TGが、ヒトADNFLEモデル動物としての妥当性が確保されたため、S286L-TGに組み込んだLox配列を読み取り、選択的に導入疾患遺伝子をゲノムから排除するCre発現を、非内在性低分子化合物で導入できるCre-ERシステムを導入したダブルトランスジェニックラットを作出した。てんかん性放電発現後に責任遺伝子をCre-Loxシステムを用い、削除したが、てんかんの改善は得られなかった。このため、てんかん責任遺伝子は、てんかん原生の獲得に重要な役割をじゃ足すものと考えられるが、てんかん発作制御としての標的とはなりがたい実験事実を明らかにした。また、従来の抗てんかん薬開発スクリーニングで多用されていた、最大電撃けいれんとPTZ誘発性けいれんに対して、非感受性を示す低分子化合物が新たな抗てんかん薬である可能性も、同時に見いだした。
2: おおむね順調に進展している
常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)の責任遺伝子に相同するCHRNA4変異遺伝子(S286L変異)とラットChrna4遺伝子のナチュラルプロモーターを同時導入したS286L-TGの作出に加え、Cre-Loxシステムを用いた、トランスジェニックラットの作出も同時に行い、これら遺伝子の双方を有するダブルトランスジェニックラットの作出にも成功した。とくに、責任遺伝子がてんかん病態の中で、てんかん原生獲得に重要な役割を果たしていたにもかかわらず、発作原生には関与していなかったことから、今後の治療方法の開発に、非常に重要な役割を果たす結果を得たものと考える。てんかん性放電発現後に責任遺伝子をCre-Loxシステムを用い、削除したが、てんかんの改善は得られなかった。このため、てんかん責任遺伝子は、てんかん原生の獲得に重要な役割をじゃ足すものと考えられるが、てんかん発作制御としての標的とはなりがたい実験事実を明らかにした。また、従来の抗てんかん薬開発スクリーニングで多用されていた、最大電撃けいれんとPTZ誘発性けいれんに対して、非感受性を示す低分子化合物が新たな抗てんかん薬である可能性も、同時に見いだした。
非定型欠神てんかんモデル(PVSCC-KD:Pカルシウムチャネルコンディショナルノックダウン)の発作症状は、ヒト非定型欠神てんかん第一選択薬であるバルプロ酸で抑制される。一般的にADNFLEに対する第一選択薬はカルバマゼピンであるが、S284L変異を有するヒトADNFLE患者は、カルバマゼピン耐性でゾニサミドとトピラマートによって抑制されるが、S286L-TGも同様にカルバマゼピン耐性かつゾニサミド・トピラマート反応性であった。これらの結果を踏まえて、PVSCC-KDに対してバルプロ酸を、S286L-TGにゾニサミドを、発症前慢性投与による発症予防、発症後の発作症状改善後の漸減中止後の寛解維持期の有無についてスクリーニングを実施する。各病態期における治療効果により、ADNFLEの病態成熟過程の解釈が可能となり、治療臨界の戦略の方向性設定が可能となる。責任遺伝子制御治療臨界期確定後の低分子化合物スクリーニング試験責任遺伝子発現制御による、発症予防及び発症後の完全寛解:他の神経伝達機構を巻き込んだ病態成熟の関与がないことから、責任遺伝子情報に従った変異蛋白の機能制御能を有する低分子化合物スクリーニングへシフトする。責任遺伝子発現制御による発症予防のみ(発症後の治療は無効):他の神経伝達機構を巻き込んだ病態成熟に責任遺伝子が関与していることを示す結果であり、マイクロアレイを用いた発症前後の発作焦点領域における遺伝子発現プロファイリングを実施する。責任遺伝子発現制御が無効:責任遺伝子が主要病態、或いは胎生期以前からの病態成熟の開始。
1.ダブルトランスジェニックラット作出・系統維持とジェノタイピング:S286L-TGとCre-Lox-TGの作出は、S286L-TGとCre-Lox-TGの交配でのみ作出可能であり、実験に用いることが出来る、雄性ダブルトランスジェニックラットは1/8の確立となる。おおよそ一回の出産で、1匹の出生が見込まれるが、最低100回の出産を試みる必要がある。これに加え、ジェノタイピングは10倍の1000匹以上を施行する必要がある。2.遺伝子治療スクリーニング:昨年度の研究に引き続き、発症前に責任遺伝子除去を試みる。てんかん性放電が出現する前(4週齢)とてんかん性放電出現期(6週齢)を標的として、責任遺伝子除去を行い、発症期以降(10週齢)で、脳波及びビデオモニタリングで、発症抑制率を検討する。3.責任遺伝子除去ラットで発症防止群と発症群で、焦点領域の神経伝達障害を比較検討する。比較検討にはマイクロダイアリーシスとHPLCを用いる。4.新規治療薬に関しては、昨年度にスクリーニングが完了した低分子化合物の作用機序解析を、急性投与及び慢性投与施行後に、蛋白発現、遺伝子発現解析に加え、上記同様に情報伝達機能解析を行い、検討する。
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