研究課題
統合失調症には神経伝達物質の受容体をターゲットとする抗精神病薬が用いられるが、未だWHO の障害による損失年数のトップ10 の疾患に入っているのが現状である。統合失調症の脆弱性遺伝子であるディスバインジンが、統合失調症脳において発現が低下しており、その欠損マウスが統合失調症様の行動異常を示すことを応募者らが世界に先駆けて報告し、その後追試研究により確認されている。そこで、ディスバインジン発現増加による統合失調症予防およびディスバインジン補充による統合失調症治療法の検討をディスバインジンの過剰発現マウスや欠損マウスを用いて行う。このように本研究では、今までにない画期的な統合失調症の治療法と予防法の開発を目的とする。これまでに本研究班のメンバーらは統合失調症の脆弱性遺伝子であるディスバインジンが、統合失調症脳において発現が低下しており、その欠損マウスが統合失調症様の行動異常を示すことを報告し(Hum Mol Genet, 2004, Mol Brain, 2008, BBRS, 2008)、その後追試研究により確認されている。すでに作製したディスバインジンを過剰発現したトランスジェニックマウスに、統合失調症モデルを適用し統合失調症様の行動異常の抑制を検討している。そこで、このディスバインジン過剰発現マウスにPCP(フェンサイクリジン)を投与し、そのPCPによる行動異常の抑制を検討した。その結果、PCPによる行動異常の一部が抑制されることが見出され、その分子基盤として、ディスバインジン過剰発現マウス脳における発現解析を行い、発現異常が認められる分子を同定した。これらの結果は、ディスバインジンの発現を増加させる化合物のスクリーニングにつながり、最終的には、新規の統合失調症治療薬の開発に結びつく意義深いものである。
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