研究課題/領域番号 |
23659566
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森信 繁 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 特任教授 (30191042)
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キーワード | DNAメチル化 / うつ病 / 自殺 / BDNF / SLC3A4 / 5-HT受容体 / NTRK2 |
研究概要 |
本年度の研究計画に沿って、自殺予測のためのバイオマーカーの探索を目的とした、下記の研究を行った。 メチル化解析に関する基礎的研究:末梢血由来のDNAを対象に、セロトニン受容体(5-HT)1A, 2C遺伝子及びBDNFの受容体であるTrkB (NTRK2)遺伝子の、エクソン1をカバーするCpG island内及びshoreのCpGのメチル化解析をMassARRAYで行う方法を開発した。5-HT1A遺伝子の転写に重要な部位である領域(Chr X:113818520-113819453)のメチル化解析を行うため、合計5つのプライマーセット用いて解析する方法を開発した。5-HT2C遺伝子の転写に重要な部位である領域(Chr X:113818520-113819453)のメチル化解析を行うため、合計5つのプライマーセット用いて解析する方法を開発した。NTRK2遺伝子の転写に重要な部位である領域(Chr 9:87282548-87286336)のメチル化解析を行うため、合計3つのプライマーセット用いて解析する方法を開発した。 メチル化およびmRNA発現に関する臨床的研究:うつ病患者を対象にHamilton Scale for Depression (HAM-D)で自殺念慮を評価した上で、末梢血由来のDNA, total RNAを用いて以下の解析を行った。SLC6A4(セロトニン・トランスポーター)遺伝子のmRNA発現量について、特に健康対照者との間に有意な差はなく、自殺念慮の程度との間に有意な関連はみられなかった。エクソン1をカバーするCpGのメチル化率について、特に健康対照者との間に有意な差はなく、自殺念慮の程度との間に有意な関連はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では報告のない、5-HT1A, 5-HT2C受容体遺伝子の転写に重要な領域である、エクソン1をカバーする位置にあるCpG island, shoreのメチル化の解析法を、世界で始めて開発した。これまでに自殺者の死後脳を用いて報告のあるNTRK2遺伝子に関しては、既報にある領域を超えて多くのCpGメチル化の解析を実施した。昨年度開発に成功したSLC6A4遺伝子メチル化解析法を用いて、うつ病患者の臨床症状とメチル化率やmRNA発現の解析が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
健康者由来の末梢血DNAを用いて、BDNF, NTRK2, SLC6A4, 5-HT1A receptor, 5-HT2C receptor遺伝子のexon 1のプロモーター領域にあるCpG island内およびshoreのCpGのメチル化解析方法を開発した。このため次年度には本年度以上に多数例のうつ病者を集め、各遺伝子のメチル化を解析して自殺企図や自殺念慮との関連を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験試薬費:末梢血からのRNA, DNA抽出キット、double strand DNA計測用試薬、mRNA発現計測のためのreal-time PCR用試薬、Bisulfite反応試薬、MassARRAY用試薬などの購入。 旅費:世界生物学的精神医学会に発表を含めて参加し、DNAメチル化とうつ状態や自殺との関連を解析している研究者と情報交換を行う。 その他:英文論文の校正費用。
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