研究概要 |
常染色体劣性遺伝性若年性パーキンソン病(ARJP)は常染色体劣性遺伝病とされているにも関わらず、疾患変異をヘテロ接合性にしか有さない症例が存在することが知られている。我々はパーソナリティ障害、気分障害および強迫性障害類似症状を呈するドーパミン調節制御障害などを有するARJP症例数例についてリシークエンシングや定量的PCR法などによりいくつかの疾患変異を同定した。その中には変異をヘテロ接合性にしか持たない症例が存在した。その症例は55歳男性で、X-7年に深部脳刺激療法が施行され,刺激の自己調節が頻繁となった。病的賭博を主訴にX年近医精神科病院に任意入院後,当科に転院した。ドパミン補充薬を依存的に過量服用し,ドーパミン調節異常症候群(Dopamine Dysregulation Syndrome, DDS)と考えられた。DDSは強迫的薬物使用を主症状とする症候群であり,L-dopaの有効なパーキンソン病患者が運動症状改善に対し必要量以上のドパミン補充薬を繰り返し服用してしまうことを特徴とする。また、DDSは①punding(反復・常同行動),②多幸症または軽躁状態,③過食,④性行動の亢進,⑤病的賭博及び買物依存,⑥活動性の亢進,⑦DRTの欲求と離脱症状,⑧精神病などの多彩な精神症状を呈する。さらに本研究ではmultiple rare variantsとしてのParkin遺伝子変異の解析を通して精神疾患の病態解明に挑むことを目的とし、統合失調症を対象としてParkin遺伝子についてコピー数変異解析を行ったところ、Taqmanプローベを用いたリアルタイムPCR法によって、統合失調症56例中2例にParkin遺伝子上のexon10の欠失が疑われ、1例にexon2のduplicationが疑われる症例が存在した。
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