研究課題
統合失調症の呼気から排出される分子に注目し、その合成代謝経路を明らかにすることで病態を解明することを目的とする。報告者は、精神科病棟の空気を捕集し、匂い嗅ぎガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、病棟特有の分子を同定した(未発表)。当該分子は、内科や外科病棟の空気からは検出されず、さらに、統合失調症患者の呼気から検出されたことから、当該分子が疾患と関連する可能性が示唆された。統合失調症は異種性のある症候群である。予備的検討で当該分子は患者の約1割から検出されたので、異種性のある本疾患から当該分子が病態と関連する、比較的均一で小規模な集団を単離することをめざした。当該分子を排出する被験者と排出しない被験者の血液を用いてメタボローム解析を行った。我々はメチオグリオキサールの分解酵素glyoxalase 1(GLO1)に50%活性低下をもたらすフレームシフト変異を持った家系を同定し、それをきっかけとして内科合併症を持たない統合失調症の46.7%で末梢血にAGEsの蓄積を同定した(Arai et al. Arch Gen Psychiatry 2010)。AGEsが蓄積する状態はカルボニルストレスと提唱され、動脈硬化やアルツハイマー病の促進因子として研究されてきたが、統合失調症との関連はこれまで報告がなかった。また、カルボニルストレスを有する患者の呼気を調べたところ、当該分子が検出される者がいることも分かった。メタボローム解析ではカルボニルスカベンジャーと関連する分子も同定された。
2: おおむね順調に進展している
メタボローム解析で抽出されてきた分子が、これまで呼気から同定された当該分子とカルボニルストレスを結びつける可能性のある物質であった。当該分子の代謝経路を解明するうえで有望な知見と考える。
さらに検体を追加して、メタボローム解析を発展させ、当該分子の代謝経路を同定する。臨床情報と統合的に解析し、当該分子と臨床像の関連も検討する。
物品は購入せず、消耗品を6割以上の予算で消費する。人件費を全体の1割程度をあてる。上半期に6割の執行し、研究の迅速化を図る。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
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