研究課題/領域番号 |
23659574
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
玉木 長良 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30171888)
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研究分担者 |
服部 直也 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (30568499)
西嶋 剣一 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (60364254)
吉永 恵一郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (30435961)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 心筋交感神経機能 / PET / 心臓核医学 / MIBG |
研究概要 |
本研究ではMIBGによる交感神経機能指標と、PET検査で得られる節前・節後交感神経機能指標と対比することで、MIBGで得られる機能情報の意義の理解を深め、より優れた定量的指標を求めることを目的としている。この目的にC-11標識hydroxyephedrine(HED)の合成を北大病院に設置されたサイクロトロンと合成装置を用いて行い、まず薬剤の純度と安全性を確認した。これに基づいて院内自主臨床試験委員会で承認を得て、臨床を開始した。まず健常例10例を対象HED-PET検査を施行したところ、いづれの症例も高い心筋集積が得られ、かつその心筋内集積は均一であった。他方、同じ症例に施行したI-123標識MIBGを用いたSPECTでは、これまでの報告通り、下壁への軽度の集積低下が認められた。そこで同じ症例において再度MIBGの腹臥位でのSPECTを追加収集したところ、下壁への集積低下が改善し、HEDとほぼ同様の均一な集積を示すことが確認できた。これはMIBGの高い集積を呈する肝臓が心筋への集積に及ぼすartifactと推察され、通常の仰臥位での撮影に比べて腹臥位では肝臓が心臓から離れるために、このようなartifactが軽減されるものと考えられた。(なおこの内容は2012年6月の米国核医学会(Society of Nuclear Medicine)で口演発表に採択されている。)最後の2か月に心不全例患者への応用を開始した。これまでの限られた症例での検討では、HED-PET所見はMIBG所見と同様に集積低下を示し、交感神経機能の低下を示唆していた。これらの対比を詳細に進めることで、HEDを用いた定量性の高い心筋交感神経機能評価法の確立と、従来から行われてきたMIBG検査法の限界、および解析法の改善について大きな成果が得られる可能性が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的通りC-11標識HEDの合成とその安全性試験に成功し、臨床検討を開始することができた。初年度に計画をしていた健常例での検討をほぼ終了し、これに基づいて心不全例の検討まで進めることができ、計画通り順調に進んでいる。他方交感神経受容体機能評価も併せて実施する予定であったが、C-11標識CGP12177の合成にはきわめて時間がかかることもあり、今年度には十分な検討を行うことができなかった。この薬剤を併用した節前・節後交感神経機能指標と対比については、次年度に持ち越すこととなっている。
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今後の研究の推進方策 |
HEDでの心筋への集積が高く、鮮明な画像の得られることが確認できた、これを利用して心筋局所の交感神経機能の評価が可能であり、致死性不整脈疾患の交感神経の局所解析などに利用し、不整脈の成因に迫る検討を進める予定でいる。また今回得られたHEDの定量的指標と、従来から用いられてきたMIBGの定量的指標と対比することで、MIBGによる交感神経機能指標の課題と改善点についても明らかにする予定でいる。さらにはC-11標識CGP12177を用いた神経受容体機能評価も再開し、HED所見と対比を計画している。これにより各種心疾患における交感神経機能の節前・節後の統合的な解析が進むことが予想される。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額については、平成23年度に購入した消耗品(試薬・ソフトウェア・薬剤合成用フィルター)の支払いに使用する。
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