研究概要 |
本年度は新規合成したサンプルのPET造影およびマウス体内動態評価を行った。 用いたサンプルは前年度に実施した正常細胞およびがん様細胞に対するIn vitroにおける細胞内移行評価の結果、がん特異性が見られたFTPP(SGlc)trans2, 市場に出ているPET造影剤Laserphyrin, コントロールとして65ZnCl/生理食塩水の3種類を用いた。 ヌードマウス大腿にRGK細胞を皮下移植して担癌モデルマウスを作成し、PET撮影検査を実際に行った。その結果、62Zn結合サンプルによるPET撮影は可能であった。このとき、今回使用したLaserphyrin, TFPP(SGlc)trans2のどちらのサンプルにおいても肝臓への集積が高く見られるのが共通の所見であった。肝臓以外の正常組織集積性に関しては、サンプル投与後24時間後の画像ではLaserphyrinが脳に多く集積しているのに対してTFPP(SGlc)trans2ではほとんど脳に集積が無いことが違いとして見られた。腫瘍集積性に関してはLaserphyrinが3時間程度の短い時間で集積が高くなる傾向を示すのに対し、TFPP(SGlc)trans2は血中投与後24時間で腫瘍集積性が高くなる傾向が見られた。本結果は既存で使用されているLaserphyrinとTFPP(SGlc)trans2が異なる機序で腫瘍に取り込まれることを示唆する重要な所見である。これらのデータから、1.62ZnによるPET撮影が可能であることが明らかとなったため62Znの医療応用への展開が期待できる2.ポルフィリン誘導体の体内動態はFDGと異なる挙動を示しており腫瘍への集積も示した。精査を加えることで既存のPET造影剤とは異なる、新たながんの性質を検査可能なPET試薬としてTFPP(SGlc)trans2を提案できると示唆する。
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