研究課題/領域番号 |
23659580
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村木 重之 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40401070)
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研究分担者 |
吉村 典子 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60240355)
阿久根 徹 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60282662)
岡 敬之 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (60401064)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 老化 / 疫学 / MRI / 変形性関節症 |
研究概要 |
研究初年度の本年度は、MRIによる股関節軟骨の軟骨定量評価用解析ソフトウエアおよび軟骨質的評価用解析ソフトウエアの開発に成功した。軟骨定量評価用解析ソフトウエアに関しては、軟骨領域抽出を完全に自動化するアルゴリズムを考案した。このアルゴリズムでは、まず任意断面再構成 (MPR)法で全スライス上の軟骨と近い信号強度をもつ画素を投影して走査範囲の限定を行い、最大軟骨領域輪郭線からテンプレートを作成した後、連続スライスでMPR法により限定された範囲内の走査を行う方式とした。さらに、走査の際に1スライス毎に適用するテンプレートを緩やかに縮小することにより演算処理を最小限かつ最小範囲にとどめ、軟骨領域自動抽出の高速化を図った。軟骨質的評価用解析ソフトウエアに関しては、T2 map法によるT2計算画像をカラーマップで表示したのみでは、目視によるあいまいな判断にとどまり、軟骨変性の部位・範囲・深度に関する客観的かつ定量的な評価を行うことは出来ないため、本研究ではT2計算画像における軟骨領域抽出後に、軟骨下骨と接する境界線と軟骨表層の境界線の曲率を計算することにより補助線を補完し、軟骨領域をコラーゲン走行が異なる表層・中間層・深層の三層に分割するアルゴリズムを作成した。さらに各層を前後方向で三分割し9領域でのT2値の延長を検討して、軟骨変性の部位・範囲・深度に関する客観的かつ定量的な評価につなげるソフトウエアを開発することに成功した。 今後は、われわれが構築した大規模コホートより無作為に抽出した120名に対して両股関節MRI撮影を行い、股関節軟骨の定量的、質的データの年代別、性別基準値を確立するとともに、関連因子を解明する。従来MRI画像解析は軟骨領域抽出に長い処理時間を要していたが、研究初年度に、簡便かつ処理速度の速いソフトウェアの開発に成功したことは大変大きな意義を持つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、初年度に、MRIによる股関節軟骨の軟骨定量評価用解析ソフトウエアおよび軟骨質的評価用解析ソフトウエアの開発し、次年度以降に股関節軟骨の定量的、質的データの年代別、性別基準値を確立するとともに、関連因子を解明する計画となっている。 研究初年度の本年度は、MRIによる股関節軟骨の軟骨定量評価用解析ソフトウエアおよび軟骨質的評価用解析ソフトウエアの開発に成功した。軟骨定量評価用解析ソフトウエアに関しては、軟骨領域抽出を完全に自動化するアルゴリズムを考案するとともに、走査の際に1スライス毎に適用するテンプレートを緩やかに縮小することにより演算処理を最小限かつ最小範囲にとどめ、軟骨領域自動抽出の高速化を図った。軟骨質的評価用解析ソフトウエアに関しては、T2 map法によるT2計算画像をカラーマップで表示したのみでは、目視によるあいまいな判断にとどまり、軟骨変性の部位・範囲・深度に関する客観的かつ定量的な評価を行うことは出来ないため、本研究ではT2計算画像における軟骨領域抽出後に、軟骨下骨と接する境界線と軟骨表層の境界線の曲率を計算することにより補助線を補完し、軟骨領域をコラーゲン走行が異なる表層・中間層・深層の三層に分割するアルゴリズムを作成した。さらに各層を前後方向で三分割し9領域でのT2値の延長を検討して、軟骨変性の部位・範囲・深度に関する客観的かつ定量的な評価につなげるソフトウエアを開発することに成功した。 今後は、われわれが構築した大規模コホートより無作為に抽出した120名に対して両股関節MRI撮影を行い、股関節軟骨の定量的、質的データの年代別、性別基準値を確立するとともに、軟骨の量的、質的低下に関連する因子を解明するが、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度にMRIによる股関節軟骨の軟骨定量評価用解析ソフトウエアおよび軟骨質的評価用解析ソフトウエアの開発に成功した。今後は、われわれが構築した大規模コホートのうち、東京都住民コホートの対象者1,350名より120名を無作為に抽出して、両股関節MRI撮影を行う。撮像は3TのMRI(Philips 3.0T-MRI)にて下記の要領で行う。軟骨定量評価用シークエンス:3D DESS(double-echo steady-state)法に準じたパルスシークエンスで矢状断撮影を行う。軟骨質的評価用シークエンス:軟骨のT2値はコラーゲン配列の規則性や水分含有量によって変化を来たし、軟骨損傷により上昇すると考えられているため、T2 map法(TR:2700, TE:10-70, FOV=120, section thicknes:3mm, matrix:384×384,撮影時間9分)を用いた軟骨変性評価を行う。蓄積した「MRIによる股関節軟骨の定量/質的評価ソフトウエアを適用して計測値を出力する。具体的には軟骨体積と軟骨の厚み、軟骨の厚みが減少している領域面積を自動算出する。さらに軟骨変性範囲として出力し、個人内での軟骨変性の有無と部位を同定する。対象者は地域代表性を有しているため、これらのデータをもとに股関節軟骨の定量的、質的評価の基準値を確立する事が可能である。 さらに、大規模コホートの膨大なデータベースとリンケージすることにより、股関節軟骨定量的、質的評価データに関連する因子の解明を行う。 本研究により客観的な軟骨の定量的かつ定性的診断基準を設けることが可能となるほか、これまでには見いだせなかった新たな関連因子を同定する事が可能であり、変形性股関節症の予防対策に大きく貢献するものと期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
作成したソフトウェアにてMRIを解析するためのコンピュータを備品として申請している。本研究で開発するプログラムは3次元表示を行う為、グラフィックボードとプログラム内のアルゴリズムの相性により表示系の調整が必要となる。また臨床応用と一般への普及を目指している為、最新のOS環境と現在普及しているOS環境の両方でのプログラムの動作検証が必要となる。 MRIデータは、OA臨床データベース内のハードディスクに保管されるが、これらのデータの物理的な破損などによる損失を避けるため、バックアップ用にハードディスクやDVDなどの記憶媒体への移行が必要となる。さらに、バックアップデータを統合し、解析用データベース構築を行う必要があり、これにはデータ正規化領域および、記憶領域として大容量かつ動作が安定したハードディスクが必要となる。以上の作業に必要な記憶媒体費用を予算として申請している。また、MRI撮影に際して雑役務費用発生するが発生するため、同費用を予算として申請している。 MRIによる股関節軟骨の定量/質的評価ソフトウエアの大規模データへの適用には、解析精度と処理速度を高めるとともに、システムのバグを除去する作業が必要となる。プログラム開発のためには、専門知識を有するプログラマーを雇用する必要があり、開発に必要な経費としてプログラマーに対する謝金を申請している。 またMRI画像のデータベース化およびデータベース管理の実験補助、エンドユーザーの立場からシステムを検証する実験補助など対しての人件費を謝金として申請している。さらに、MRI撮影は東京都内で行うため、打ち合わせや調査の為の旅費は必要ないが、毎年、研究成果を国内および海外に発表させていただくために、国内および海外旅費を予定している。
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