研究課題/領域番号 |
23659591
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
米田 哲也 熊本大学, 大学院生命科学研究部 医療技術科学講座, 准教授 (20305022)
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キーワード | 位相 / アルツハイマー病 / MRI / アミロイド老人斑 / 老化 |
研究概要 |
前年度に引き続き、遺伝子改変マウス脳を還流固定したものを用いて7TMRIで医療磁場強度で撮像に耐えうる撮像条件と描出能の検討を行った。まず、昨年度に得られた結果であるpixel sizeを落としてiso boxelとする方法は、7TMRIを用いたとしても、面内の分解能が老人斑が提示する信号強度に対して十分とは言えないことが分かったため、単純にこれを採用することを避けるべきであると結論付けられた。そこで、今年度は撮像方法そのものを思い切って変えることとし、3Dで撮像していたところを、2D-FLASHによって撮像を行い、その代り、面内の分解能を維持しつつ、band幅を調整してBW=30~50 Hz/read とすることでSNを維持して高い描出能を提供できるように工夫を行った。 この検討の結果、撮像時間は高速撮像法を用いずとも約4~8分と昨年度までの時間よりも短縮されつつ、面内の分解能を向上した画像を得ることが可能になった。位相情報は高いSNを背景に、従来とほぼ同じ描出能を出しており、十分に老人半を描出することが可能であると考えられる。さらに今年度からはパラレルイメージングを用いた高速撮像法を検討をはじめ、十分に脳深部にも分解能高く信号を得ることが2D-FLASH法では可能であることを確かめた。 しかしながら、本年度は共同研究を行っていた研究者が体調不良のため、遺伝子改変マウスの入手が困難になったため、従来より使用していたマウス脳を用いて検討を進めたこともあり、検討数がやや少ないという状況であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でのべたように、やや検討数が少ない傾向にはあるが、医療用MRIに適用するための現実的な撮像パラメタの決定にこぎつけられたことは意義が高いと考えられる。さらに、期待された以上のSNを決定したパラメタで画像コントラストとして得られたこと、また、研究機関に所属する動物用MRIに新しくパラレルイメージング用の多チャンネルコイル・超伝導クライオスタットコイルが導入されたことから、次年度はこれまで以上に効率的に検討を進められると考えらるため、遅れ気味の検討件数の確保は、じゅぶんに実現できると考えている。さらに次年度より共同研究者が本格的に復帰するため、マウス脳も十分に確保できる。臨床検討を始める準備も大学病院との検討に入りつつあるため、総合的に見ても、現在の状況は当初の計画よりもやや遅れているものの、次年度は当初の検討を進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ペンディングになっている、人の検体脳の撮像を行い、今年度に確定した撮像パラメタが有効に働くかを検討する。さらに、やや遅れているマウス脳の検討例数を確保し、パラレルイメージング法を用いて併せてより効率的な撮像時間の短縮と、MRI信号の維持の検討を続ける。倫理委員会の承諾を得ているため、健常者の脳撮像とともに、患者の脳撮像を3TMRIを用いて行う予定である。例数は、論文化を考えて、各20例を予定したい。 最終的には、患者群を用いて、撮像時の問題になるであろう動きへの対策を講じることまで行いたい。この具体的方法は、multi-vaneなど、従来より動きの抑制が良く聞くことが知られている技術の応用を中心に検討を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度執行されなかった健常者への謝金を確保しつつ、並行して検討したい人工的な老人斑作成と、撮像のための資金投入を考えている。また、論文化をすでに考えているため、この投稿費等も検討したい。結果の発表は論文だけでなく、国際学会(RSNA、ECR)でも発表を行い、いち早い学術的・技術的priorityを得たいと考えている。さらに、技術を広げるために、メーカーとの会合を積極的に行うことも重要ではないかと思われる。
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