研究課題/領域番号 |
23659593
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
大西 健 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (50152195)
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研究分担者 |
秦野 修 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40164850)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 放射線 / フラボノイド / 癌 / 植物生理活性物質 / 増感剤 |
研究概要 |
42種類のフラボノイドの放射線増感作用及び細胞致死作用、細胞増殖抑制作用をスクリーニングした。放射線増感作用:H1299/neoにおける各フラボノイド(20μM)の放射線増感作用をコロニー形成法を用いて調べた。その結果、既に増感作用が報告されているApigeninとFisetinに加え、新規にButeinとFlavonoid A(仮称)に増感作用が見られた。10%生存率におけるenhancement ratioは4種とも1.3~1.5であった。その他のフラボノイドには放射線増感作用は見られなかった。細胞致死作用:H1299/neoを用いてコロニー形成法で調べた結果、致死作用の最も顕著なフラボノイドは3’,5,7-Trihydroxy-3,4’-Dimethoxyflavone (THDF)であり、10、20、40μM濃度での生存率は、それぞれ35、30、5%であった。次に致死作用の顕著なフラボノイドはRhamnetin、Luteolin、Butein、Fisetinで、10、20μMの低濃度での生存率は40-80%であるものの、40μM濃度での生存率は5%程度と低かった。その他のフラボノイドでは、10、20μMの低濃度でほぼ80%以上の生存率であった。細胞増殖抑制作用:H1299/neoを用いて、セルカウンターで生存細胞を計測して調べた。その結果、増殖抑制作用の最も顕著なフラボノイドはTHDFで、次に強い増殖抑制作用はApigenin、Geraldol、Tamarixetinに見られた。弱い増殖抑制作用がその他11種類のフラボノイドに見られた。以上の結果から、Flavonoid Aは臨床応用可能な副作用の少ない増感剤として、またTHDFは抗がん剤として大変有望であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度、42種類のフラボノイドの放射線増感作用及び細胞致死作用、細胞増殖抑制作用を計画通りに調べることができた。その結果、既に放射線増感作用が報告されているApigeninとFisetin に加え、ButeinとFlavonoid Aに放射線増感作用を新規に見出すことができた。また、THDFに強い抗がん作用があることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
I. 放射線増感作用および抗がん作用のメカニズムを解析する。1.アポトーシス誘導が放射線増感作用のあるフラボノイドにより増強されるかどうかをアポトーシス小体検出法、DNAラダー検出法、アポトーシスあるいは細胞生存関連タンパク質のWestern blot法で調べる。2.DNA修復が放射線増感作用のあるフラボノイドにより阻害されるかどうかをDNA二重鎖切断部位を検出するγH2AX免疫蛍光染色法で調べる。3.細胞周期が放射線増感作用のあるフラボノイドにより影響を受けるかどうかをフローサイトメトリー法、細胞周期調節関連タンパク質のWestern blot法で調べる。II. 放射線増感作用あるいは抗がん作用を示すフラボノイドの化学構造を比較し、共通した化学構造があるか検討する。注目した特定部位が、放射線増感作用あるいは抗がん作用のカギを握る部位なのかを最終的に決定するため、人為的に特定部位の修飾(メチル化、エチル化あるいはアセチル化)を行い、その修飾フラボノイドの放射線増感作用および抗がん作用を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(2,252円)は消耗品費に充てる。
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