研究課題/領域番号 |
23659593
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
大西 健 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (50152195)
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研究分担者 |
秦野 修 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40164850)
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キーワード | 放射線 / フラボノイド / 癌 / 植物生理活性物質 / 増感剤 |
研究概要 |
平成24年度は、前年度に放射線増感作用が見出されたフラボノイドAについて、次の3点を解析した。①フラボノイドAの増感作用のがん細胞優位性、②フラボノイドAの増感作用のp53依存性、③フラボノイドAによる放射線増感作用の作用機序 【方法】 使用細胞:正常細胞(ヒト肺線維芽細胞HFL-III、マウス線維芽細胞C3H10T1/2)、がん細胞(ヒト肺がん細胞H1299/wtp53、H1299/mp53、C3H/10T1/2由来マウスがん細胞C3H/MCA Clone 15) X線照射:10 MV、4 Gy/min、linear accelerator (Mitsubishi Medical Linac) 解析法:細胞生存率(コロニーアッセイ法)、アポトーシス解析(DAPI染色)、DNA二本鎖切断解析(γH2AX免疫蛍光染色)、タンパク質/遺伝子発現解析(ウエスタンブロット法、リアルタイムPCR法) 【結果・考察】 フラボノイドAの増感作用はがん細胞(H1299、C3H/MCA Clone 15)に優位であった。また、フラボノイドAの増感作用はH1299/wtp53とH1299/mp53で見られ、p53非依存的であった。放射線誘導アポトーシスの出現頻度は、フラボノイドA前処理により放射線単独処理よりも増加した。これに相関して活性型Caspase 3および断片化PARPの増強が見られた。γH2AXフォーカス数の変動については、放射線単独処理細胞と放射線・フラボノイドA併用処理細胞間で有意な違いは見られなかった。フラボノイドAによるアポトーシス増強は、DNA損傷量あるいはDNA修復阻害以外の要因によることが示唆された。現在、アポトーシス頻度とミトコンドリア活性の相関を調べるため、ミトコンドリア活性の調節系であるAMPK-PGC-1αを中心としたシグナル伝達系について解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に放射線増感作用が見出されたフラボノイドAについて、次の3点を解析することができた。①フラボノイドAの増感作用のがん細胞優位性、②フラボノイドAの増感作用のp53依存性、③フラボノイドAによる放射線増感作用の作用機序 これらの解析結果は、学会(日本放射線腫瘍学会生物部会学術大会、日本放射線影響学会、日本癌学会学術総会、The 11th International Congress of Hyperthermic Oncology & The 29 th Japanese Congress of Thermal Medicine)にて発表した。さらに、担癌マウスを用いたin vivo実験でButein、Flavonoid A、THDFの放射線増感作用、腫瘍増殖抑制作用を現在実験中である。
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今後の研究の推進方策 |
I. フラボノイドAの放射線増感作用のメカニズムを解析する。 フラボノイドAによる放射線誘導アポトーシスの増強が、エネルギー代謝系の亢進に依存したものかを検討するため、解糖系、酸化的リン酸化経路に関わる因子の解析を行う。 II.フラボノイドAの放射線増感作用が個体レベルでも見られるか、担癌マウスを用いたin vivo実験を継続する。 III. 放射線増感作用あるいは抗がん作用を示すフラボノイドの化学構造を比較し、共通した化学構造があるか検討する。注目した特定部位が、放射線増感作用あるいは抗がん作用のカギを握る部位なのかを最終的に決定するため、人為的に特定部位の修飾(メチル化、エチル化あるいはアセチル化)を行い、その修飾フラボノイドの放射線増感作用および抗がん作用を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費720,000円、旅費20,000円、人件費・謝金30,000円、その他50,000円
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