前年度までに2種のフラボノイドが放射線増感作用を示すことを培養細胞レベルで新規に見出した。平成25年度は、この2種のフラボノイドの放射線増感作用を担がんヌードマウスを用い個体レベルで検討した。さらに、新たにがん細胞で形成される細胞塊(スフェロイド)中にがん幹細胞様細胞(CD133陽性細胞)が出現することを見出したので、この細胞に対するフラボノイドの放射線増感作用についても解析を試みた。 【方法】 ヒト非小細胞肺がん細胞(H1299)で形成された腫瘍組織片をヌードマウスに移植し、フラボノイドを腹腔内注射により投与後、移植腫瘍部位にX線を照射して経時的に腫瘍の大きさを測定することで腫瘍増殖曲線を得、これをもとに、フラボノイド単独処理群、放射線単独処理群およびフラボノイド/放射線併用処理群間で放射線の腫瘍増殖抑制効果の比較を行った。さらに、T98G細胞を非接着性の96穴U字型プレートに播種し、スフェロイドを作製し、CD133陽性細胞の放射線感受性をコロニー形成法で検討した。 【結果・考察】 フラボノイドA(仮称)については、X線(5 Gy)との併用処理による腫瘍増殖の抑制効果は確認されなかった。もう一方のフラボノイドB(仮称)については、X線(2 Gy)単独群と比較して併用処理群では有意差はないものの、腫瘍の増殖が抑制される傾向が確認された。今回、時間的および経費的な制限のため、X線の線量やフラボノイド処理条件などを変え詳しくフラボノイドの増感作用を解析することができなかった。今後、2種のフラボノイドの放射線増感作用を個体レベルでより詳しく調べ、放射線増感作用の有無を確認する必要がある。また、スフェロイドに出現するCD133陽性細胞は、陰性細胞に比べ放射線抵抗性を示した。現在、CD133陽性細胞に対するフラボノイドの放射線増感効果について解析中である。
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