分子標的薬の薬効発現過程(標的への結合→薬効発現、低酸素状態の改善など)を非侵襲的かつ複合的に可視化し、感受性予測や治療最適化を可能にすることを目指した。 1)上皮性増殖因子受容体(EGFR)に対するチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の耐性化を可視化できる新規システムの開発: TKI耐性化の多くはEGFRの構造変異による。変異EGFRにも結合できる第二世代TKIは構造内にマイケルアクセプタ(MA)を持つことに着目し、MAの有無以外は同一構造を持つ2種のプローブを設計、合成し、99mTcで標識した。ヒト肺癌由来耐性細胞株H1975において、MA有プローブは、MA無に比べ約2倍高く集積すると共に、EGFRリン酸化も強く阻害したことから、集積量は変異EGFRへの結合の差を反映していると考えられた。 2)腫瘍内低酸素状態および腫瘍悪性化を可視化するプローブの開発: 固形腫瘍には低酸素状態の部位が存在し、低酸素誘導因子(HIF1α)が機能して腫瘍の悪性化と深く関連することが知られている。低酸素状態を可視化するPETプローブ(18F-FPINI)、およびHIF1α活性を可視化するプローブ(111In標識POH)をそれぞれ新規に開発した。オートラジオグラフィと組織学的検討からFPINIは腫瘍の低酸素部分に、POHはHIF1α活性部分に集積することを認めた。がんの悪性度、治療抵抗性、また治療応答の指標となりうるものと考えられた。 3)SPECTカメラによる2核種同時イメージングの検討: SPECT核種は各々固有のエネルギーを持つため、原理的には複数同時イメージングが可能であるが、現時点では小動物同一臓器では難しい。ニューラルネットワークを応用してエネルギースペクトルから核種を切り分けることで標記を進め、一定の成果を得た。上記1,2と併せることで、新しいイメージングシステムとなり得ると期待できる。
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