研究課題/領域番号 |
23659602
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
松元 祐司 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, がん専門修練医 (00600579)
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研究分担者 |
佐竹 光夫 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 科長 (30501861)
小島 良紀 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 研究員 (20167357)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 腫瘍イメージング / フマル酸 |
研究概要 |
当初、予備実験で成功したフマル酸のC-11標識体の合成法はブロモ酢酸をカップリングする方法であるが、反応速度が遅いため合成に成功してもC-11の半減期が短いため放射能が減衰し臨床応用には不向きであった。 そこで、まず、フマル酸のC-11標識体の合成法の改良に着手した。安定同位元素C-13の標識体についてはtert-ブチルエステルの塩化銅を用いたカップリング反応による合成が報告されている。 しかしながらこの方法をC-11標識に応用することは、導入後の工程が長いこと、厳密な無水条件が必要なことからPET薬剤合成用の自動合成装置による標識反応には適さないと考えた。そこで、プロペニルマグネシウムブロミドが市販されていることに着目し、グリニャール反応によりC-11を導入した後、得られたクロトン酸を酸化することを検討した。現在、中間生成物の合成までは成功しており、近日中に新合成法の確立が期待される。 また、収率は悪いものの従来の合成法によるC-11フマル酸により培養細胞レベルの実験を試みた。即ち、がん細胞群及び正常組織細胞群を液体培地上で培養後それぞれの細胞群の対数増殖期に、合成したC-11フマル酸を等量ずつ培地中に加え一定時間37℃、5%CO2中でインキュベートした。時系列的にそれぞれの細胞群から培地を取り除き、PBSで3回wash、適切な細胞溶解バッファーを用いてwhole cell lysateを取り出し放射能カウントを測定した。がん細胞群では速やかにC-11の放射能ピークが測定されたが、正常細胞群ではC-11の放射能はバックグラウンドレベルであった。但し、今回の実験では、C-11フマル酸の収率が悪いため有意な差が出ているとは断定出来ず、新合成法による実験により再現性のある結果が生じるかどうか、なお検討する余地があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた、各細胞のミトコンドリア分画におけるC-11フマル酸の放射能レベルについては現在も確認出来ていない。現状でのC-11フマル酸の合成法では収率が悪く放射能レベルが測定限界以下であるためである。 また、C-11フマル酸の合成方法の改良に難渋したため、当初予定していたF-18フマル酸の合成方法については検討に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、C-11フマル酸の新合成法については速やかに確立させる。次いで、C-11フマル酸を通常のヌードマウスに尾静脈より静注する。一定時間の後、そのマウスを解剖、各臓器別に放射能カウントと重量を測定し、C-11フマル酸の体内分布を決定しておく。一方、ヌードマウスにがんを移植し坦癌動物を作成する。その際、がんの種類によるC-11フマル酸の分布の違いを比較するため数種のがんを移植し比較することとする。それら担癌ヌードマウスにC-11フマル酸を尾静脈より静注し、一定時間の後マウスを解剖、各臓器及び移植したがん組織に対する放射能カウントと重量を測定し、C-11フマル酸の体内及びがん組織への分布を決定しておく。各がん種による相違点についても検討する(所謂、バイオディストリビューションの決定)。 更に、上記と同様の措置をした通常のヌードマウス及び担癌ヌードマウスそれぞれにつき、動物用PET装置にて撮像し、がんに特異的にC-11フマル酸が集積しているのか画像解析し、前記のバイオディストリビューションの結果と相違ないか確認する。動物用PETカメラは当施設内にあり画像化は可能である。F-18フマル酸の合成が成功した場合、F-18フマル酸のがん細胞及び正常細胞内での挙動について解析し、C-11フマル酸との共通点及び相違点について検討するとともに、上記と同様の動物実験をF-18フマル酸についても行いC-11フマル酸の結果と比較することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度では当初予定していた、C-11フマル酸の新合成法についての確立が思うように進まず、そのため、試薬や培養細胞の購入費が余ってしまったが、平成24年度では速やかにその新合成法について確立し、実験の遅れを取り戻すこととする。 更に、平成24年度では動物実験が主となるため、試薬類の購入費用以外に、動物の購入費用や飼育費用が多くを占める可能性がある。また、動物実験を一人で行うのは煩雑であるため、実験の進行状況によっては実験補助員等の活用も考慮する必要が生じるであろう。そのため、人件費や謝金などの支出が高まる可能性もある。
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