研究課題/領域番号 |
23659603
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
全田 貞幹 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, 医員 (30466198)
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研究分担者 |
大村 素子 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70244506)
原 孝光 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (70464542)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | miRNA / 放射線感受性 |
研究概要 |
放射線高感度群の細胞群、及び放射線低感度群の細胞群を液体培地上で培養後、それぞれの細胞群の対数増殖期に低線量(1Gy~5Gy)のγ線を照射後、一定期間37℃、5%CO2下でインキュベートした。それぞれの細胞群の非照射群と照射群の生存曲線を作成。また、それぞれにつき、細胞を1,000,000個取り出し、照射前後の細胞抽出液からsmall RNA精製用キットを用いてmiRNAを抽出した。そして、各miRNAの発現量についてリアルタイムPCR法を用いて比較したところ、予備実験で行ったマイクロアレイ法による解析と同じく放射線高感受性細胞群においては、γ線照射後hsa-let-7g遺伝子を始め8種のmiRNA遺伝子が照射前に比べて有意に発現量が増加し、また、hsa-miR-324-5p遺伝子を始め14種のmiRNA遺伝子が照射前に比べて有意に発現量が減少していた。 一方、放射線低感受性細胞群においては、γ線照射後hsa-miR-155遺伝子を始め10種のmiRNA遺伝子が照射前に比べて有意に発現量が増加し、また、hsa-miR-527遺伝子のみが照射前に比べて有意に発現量が減少した。 上記の実験結果から、hsa-let-7g遺伝子やhsa-miR-527遺伝子は放射線感受性を増加させるmiRNAと考えられ、その一方、hsa-miR-324-5p遺伝子やhsa-miR-155遺伝子は放射線感受性を低下させるmiRNAと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた、放射線感受性に関係するmiRNA遺伝子に対し、強制発現試薬や阻害薬を用いた実験(生存曲線の作成及び各miRNAの発現量の比較、各細胞群の放射線誘発アポトーシスの確認等)についてはまだ施行していないため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、平成23年度に予定していた、放射線感受性に関係するmiRNA遺伝子に対し、強制発現試薬や阻害薬を用いた細胞レベルでの実験を施行する。 次いで、マウスなどの動物に放射線高感受性の腫瘍或いは放射線抵抗性の腫瘍を持つ坦癌動物を作成し、それぞれのグループに線量分布が適切になるように外部照射、小線源照射を行なう。その際の治療計画はマウスにおける癌の生着度や広がり等を考慮し、また高度な壊死にも陥らずかつ適切なアポトーシスが生じるように決定する。それぞれにおいて、照射前後での癌組織のアポトーシスの発生状況をTUNEL法により判断。また、各miRNAの発現量を確認する。 一方、各癌にはin vivo用のトランスフェクション試薬を用いて各miRNA強制発現試薬・抑制試薬を導入、それらの導入前後及び照射前後のアポトーシスの発現率をTUNEL法で確認し、また、各miRNAの発現量を確認する。 更に坦癌動物の照射前後及び各miRNA強制発現試薬、抑制試薬導入前後においてFDG-PETを施行し坦癌動物の放射線治療効果の判定をし、また11C-AnnexinVを用いたアポトーシスPETによってアポトーシスの出現頻度を画像化し評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度では当初予定していた、放射線感受性に関係するmiRNA遺伝子に対し、強制発現試薬や阻害薬を用いた細胞レベルでの実験が施行出来なかったため、試薬購入費が余ってしまったが、速やかにこれらの試薬を購入し当該実験を施行する。 更に、平成24年度では動物実験が主となるため、試薬購入費用以外に、動物の購入費用や飼育費用が多くを占める可能性がある。また、実験の進行状況によっては実験補助者の活用も考慮する必要があるため謝金などの支出が生ずる可能性もある。
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