研究課題
腫瘍細胞の標的部位に集積する機能を付与した金ナノ粒子をX線治療用増感剤として用いることで、深部・大容積のがん治療に役立つX線光線力学的治療(XPDT)を提案した。H23は、1)X線エネルギー伝達計測、2)エネルギー変換メカニズム解析、3)活性酸素種発生量計測を行った。また、H24に予定していた4)腫瘍集積性のバイオコンジュゲート合成、5)in vitro腫瘍細胞影響評価に加え、6)in vivoの予備実験を前倒しで実施した。その結果、以下の結果が得られた。・エネルギー変換メカニズムと活性酸素種の測定金ナノ粒子によって吸収されたX線の一部は、光電効果により電子を発生させ、周囲の酸素を還元し、反応性の高い活性酸素を発生する。その結果、一重項酸素、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカルが発生していることがわかった。・バイオコンジュゲート合成腫瘍集積性を高めるために、腫瘍細胞に高発現するトランスフェリン、EGFR、TRALなどで修飾したカチオン性脂質やリポソームを用い、細胞内に金ナノ粒子複合体を導入した。一次抗体として、ミトコンドリア等に高発現しているVDAC1、COX4を結合させ、金ナノ粒子をミトコンドリア近傍に送達する複合体を合成した。・in vitroおよびin vivo腫瘍細胞影響評価合成した金ナノ粒子複合体を、HeLa細胞に投与し、X線照射下で生存率を調べた結果、15GyのX線照射下で1.4nmの金ナノ粒子複合体投与群で、有意に細胞生存率が低下した。in vivoではB16の黒色メラノーマ担がんマウスに投与し、30GyのX線照射下で、金ナノ粒子投与群で、腫瘍体積増加率が有意に減少することを確認した。以上のことから、金ナノ粒子複合体がX線治療の増感剤として有効であり、XPDTの確立に必要なX線条件および細胞内送達方法等の基本要件が明らかになった。
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Nanomedicine : Nanotechnology, Biology, and Medicine
巻: 7 ページ: 604-614
10.1016/j.nano.2011.01.014