当研究では、抗体プローブを用いた生体イメージングによる肝移植後拒絶反応の検出法を開発することを目的とし、異系統間マウス肝移植モデルにおいて発光タンパクを結合した抗体プローブを全身投与することにより、グラフトに浸潤した傷害性細胞を検出することを目的としている。 我々はまず、研究の基礎となるマウス肝移植モデルの確立に成功し、さらにC57BL/6系統のマウスからC3H/HeJ系統のマウスへの肝移植により、急性細胞性拒絶反応を誘導することに成功した。続いて、異系統移植後にレシピエントから摘出した肝臓グラフトの免疫染色により、大部分の浸潤細胞はT細胞であり、抗CD3抗体により良好に染色されることが分かった。そこで、急性細胞性拒絶反応下のレシピエントに抗CD3ハムスターモノクローナル抗体の全身投与を行い、その6時間後に摘出したグラフトにおいて抗ハムスター抗体を2次抗体とする免疫染色を行ったが、浸潤細胞に結合した抗CD3抗体を検出することは出来なかった。 平成25年度は、全身投与により抗CD3抗体を浸潤細胞に結合させるための条件検討をさらに進めた。まず、浸潤細胞への抗CD3抗体の結合から2次抗体による検出までのプロセスにおいて想定される問題点を除外するため、蛍光色素(Cy5)を結合した抗CD3抗体を急性細胞性拒絶反応下のレシピエントに投与し、これを蛍光顕微鏡により摘出したグラフトにおいて直接検出する実験を行ったが、検出は出来なかった。 この結果より、問題点は全身投与された抗体の浸潤細胞への結合のプロセスにあるものと考え、生体におけるグラフトへの抗体のデリバリーにおいて想定される問題点を除外するためにマウス肝臓の体外灌流装置を開発し、この灌流装置上でCy5結合抗CD3抗体を含む灌流液を用いた6時間のグラフト灌流を行った後、蛍光顕微鏡による検出を行ったが、浸潤細胞に結合した抗体は検出できなかった。
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