研究課題/領域番号 |
23659608
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
古川 博之 旭川医科大学, 医学部, 教授 (70292026)
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研究分担者 |
松原 和夫 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20127533)
深井 原 北海道大学, 大学病院, その他 (60374344)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 心停止ドナー / 臓器保存 / 肝移植 / 灌流保存 |
研究概要 |
目的:大動物(豚)の心停止ドナーから灌流保存後に肝移植を行うモデルを作成し、臨床応用可能な肝グラフト灌流保存法を開発することを目的とする。重水含有新規臓器保存液の最適組成を模索し、UW液(UW-gluconate)を凌駕する冷保存障害軽減効果、細胞保護メカニズム、大動物の肝臓の単純冷却保存・灌流保存から移植を行い臨床に即した移植モデルを確立し、新規保存液の効果を明らかにすること。結果:UW液を凌駕する保護効果の新液1、2を作成し得た。新液の効果には重水が不可欠であり、解糖やミトコンドリア複合体Iの阻害、細胞質Ca2+ overload負荷で効果が消失した。また、細胞質のNa+ overload負荷はNa+/K+ ATPaseやNa+/Ca2+ exchangerの活性やATP量に影響を与えなかった。新液はラット肝48時間冷保存後の再灌流において、胆汁産生やATP産生を速やかに回復させ再灌流障害を軽減した。冷保存後の細胞・臓器の膨張やアクチンの脱重合が阻害された。大動物の肝、腎移植では強い保護効果は得られなかった。臓器の灌流不全の原因となるPEG濃度を下げることで解決すると予想された。PEGが少量の粘性の低い組成でも十分な効果が得られた(新液3)。新液3は新液2とほぼ同等の効果を有し、最終組成として今後の検討に使用すべきものと考えられた。今後、新液2と新液3の保存効果を比較することで、最終的に大動物の灌流保存に用いる灌流保存液を決定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来、新液(重水保存液)をUW液(UW-gluconate)液との比較を単純冷却保存ならびに灌流保存による肝移植モデルにて比較しする予定であったが、新液2の組成中のPEGが少量の粘性の低い組成でも十分な効果が得られた(新液3)。従って、最良の新液を最終の大動物実験に用いるため、新液2と新液3のどちらの保存液がより効果的であるかを決定するのに時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
新液(重水保存液)の組成は、ほぼ決定しており、この新液とUW液(UW-gluconate)液との比較を単純冷却保存ならびに灌流保存による肝移植モデルにてプレリミナリーに行い、交付申請書の計画書通りの温阻血時間ならびに、その後の単純冷保存・灌流保存の時間が妥当であるかを検討する。その後に予定通り、このコントロール、UW液(UW-gluconate)、新液(重水保存液)の3群を、a)保存なし, b) 60 分温阻血+12 時間冷却単純保存 c)60 分温阻血+12 時間灌流保存の順に検討を行って行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の消耗品として、以下のものを計上する。1)本実験はブタを用いた灌流保存モデルの評価が中心となるため、ブタ購入費および飼育費を計上する。2)結果評価のための検討項目は、主として、血液検査 および 組織学的解析費用(組織染色、免疫染色)それぞれ計上する。3)単純冷却保存や灌流保存に用いるバッグやチューブ類などを計上する。
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