研究課題/領域番号 |
23659611
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松浦 成昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190402)
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研究分担者 |
森 誠司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (90467506)
濱田 吉之輔 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10362683)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 血管新生 / がん治療 |
研究概要 |
本研究は新規の血管新生阻害物質DBP-maf(Vitamin D binding protein-macrophage activating factor)による癌の治療を目的とした研究である。今年度の研究計画は、DBP-mafの血管新生阻害作用のメカニズムの解明を細胞生物学的な観点から基礎的におこなうものであった。血管内皮細胞に対するDBP-mafの作用としてまず、MTTアッセイによる増殖能の検討を行ったところ、DBP-mafは内皮細胞の増殖を有意に抑制した。次に、種々の細胞外基質に対する接着能の検討を行ったところ、DBP-mafはコラーゲン、ラミニンに対する接着性に対する影響を示さなかったが、ヴィトロネクチンに対する接着能の有意な抑制が見られ、フィブロネクチンに対しても阻害効果が認められた。また、wound assayによる細胞運動能を検討したところ、DBP-mafは内皮細胞の運動能の有意な抑制が見られた。血管内皮細胞の管腔形成能をコラーゲン内3次元培養により検討したところ、DBP-mafは管腔形成を阻害した。以上の基礎的検討から、DBP-mafは血管内皮細胞に対して増殖能、一部の細胞外基質に対する接着能、遊走能を抑制し、その結果として管腔形成を抑制することで血管新生阻害作用を示すことが明らかとなった。なお、他の細胞に対する効果を見るために線維芽細胞を用いてコントロール実験として同様の検討を行ったところ、線維芽細胞の増殖能、接着能、運動能には全く変化が見られなかった。この結果より、DBP-mafは血管内皮細胞特異的に作用することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DBP-mafは強力な内因性の血管新生阻害物質であるが、これまでの研究結果ではin vivoの抗腫瘍効果が中心に検討されてきて、DBP-mafの血管新生阻害作用の詳細なメカニズムは明らかでにされていなかった。本研究はDBP-mafの臨床応用を企図するものであるが、作用メカニズムの検討は重要課題で、初年度はその点を中心に研究を行った。研究結果として、DBP-mafの血管内皮細胞に対する増殖能、接着能、運動能、さらに管腔形成能を抑制する結果が認められ、線維芽細胞に対してはこれらの機能に変化を及ぼさなかったので、血管内皮細胞に特異的である可能性が示唆された。これらの実験結果の詳細な分子基盤の解明までは明らかにできなかったが、初年度の研究成果としては当初の目的をほぼ達成し、満足すべきものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に明らかになったDBP-mafの血管新生阻害作用の分子基盤の解明を、機能に関連する接着分子、増殖因子、基質分解酵素などの変化を解析する。また、初年度はin vitroの実験が中心であったので、in vivoの血管新生評価系(Aorta ring assay、DASアッセイ、マトリゲル・プラークアッセイ)におけるDBP-mafの作用の検討も行う必要がある。初年度の実験も含めて、以上の検討を他の血管新生阻害物質(Bevacizumab、エンドスタチン、aaAT3、TNP等)でも行い、DBP-mafとの作用の相違点を明らかにすることも、必要である。最終的な目標が血管新生阻害効果を用いた腫瘍抑制にあるので、マウスを用いたDBP-mafの抗腫瘍効果の検討も行う必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は血管新生阻害評価アッセイおよび抗腫瘍効果の検討のためにin vivoの実験も実施するので、実験用動物の購入に研究費を使用する必要がある。また、分子メカニズムの検討のために、抗体、分子生物学的検討に必要な試薬、血管内皮細胞・がん細胞などの細胞株およびその培養に必要な消耗品、病理学的・生化学的検討に必要なガラス器具などの消耗品の購入に研究費を使用する。以上の消耗品費として研究費をできるだけ使用したいので、日本癌学会を初めとする学会へ参加しての学会発表、情報収集、国内外の調査研究はできるだけおさえたい。研究補助などの謝金、会議費等に一部を使用する予定である。
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