研究課題
現在、臓器移植成績の向上を阻む最大の課題は、抗体関連拒絶反応である。抗体関連拒絶反応は、組織適合性抗原(HLA)ペプチドや血液型抗原及び異種糖鎖抗原が標的になる。我々は、それぞれの抗原に応答するB細胞が特徴的なフェノタイプや分化機構を示し、免疫抑制剤の感受性も大きく異なることをマウスモデルで解明した。本研究では、効率的なヒトB細胞活性化・分化モデルおよびヒューマナイズドマウスを確立し、これを用いて抗体関連拒絶反応に有用である我々が独自に開発した抗CD1d抗体(抗体拒絶反応抑制剤: 特願2009-110887)の特異性と感受性を解析し、B細胞の分化・増殖機構に即した新規抗体関連拒絶反応制御法を開発することを目的とする。本年度は、抗CD1d抗体が特異性にB-1a細胞(CD19+CD11b+CD5+)からの抗体産生を抑制する機序をマウスモデルにより解明した。すなわち、抗CD1d抗体は、B-1a細胞とNKT細胞の応答によるIL-5の産生を有意に抑制することで強い抗産生抑制効果を発揮することが証明された。また、ヒトB細胞移入ヒューマナイズドNOG/SCIDマウスin vivoモデルを用い、抗CD1d抗体の抗体産生抑制効果を検討した。マウスをヒト血液型A赤血球で免疫すると血清抗A抗体の上昇を認めるが、抗マウスCD1d抗体の投与により抗体価の上昇は完全に抑制可能であった。この抑制効果は、B-1a細胞由来の抗体産生に特異的であった。本研究期間全体を通じて、標的抗原に応答するB細胞亜群別に免疫抑制剤の効果判定が可能な、従来存在しなかったモデルシステムを構築し、さらにそのモデルを用いて抗CD1d抗体の効果と特異性を判定し得た。
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化学工業
巻: 63 ページ: 27-31
今日の移植
巻: 25 ページ: 236-238
巻: 25 ページ: 504-509